じいちゃんが食べた3枚の肉
母方の親族で集まり、とある温泉街のホテルで1泊した。
その面子で集まる時は、決まってじいちゃんが「ここへ行くぞ!」という感じで発起人となってくれる。じいちゃんの提案を元に、今回は私がホテルと食事を手配した。
じいちゃんは色々と豪快な人だ。その昔、創業者としてバリバリ活躍していたそうだ。幼少期、じいちゃんは肌が黒くて声がとても大きかったので、小学校に上がるまで本気で怖かった。その上、じいちゃんはそんな私をおちょくってくるので余計に怖かった。
その反面、じいちゃんは小柄で少食な方だ。毎年、帰省するとご馳走を用意してくれていたが、じいちゃんは決まっておかずを自分の取り皿に取らず、私や姉の取り皿に置いてくれていた。「もうええで、じいちゃん!」と言ってもよく置いてくれたものだ。親切心もあったと思うが、元々あまり食べない方なのだと思う。
そんなじいちゃんが、ホテルの食事で出てきた3枚の焼肉を1枚残らず食べたことに驚いた。今までそんなことは滅多になかったのだ。1枚食べて、後の2枚は私か父か姉に配られるかなぁと予想していた。私がリサーチして、手配した食事のプランだったので、嬉しかった。
じいちゃんはこの間、90歳になった。会うまではじいちゃんの体調を心配していたが、まだまだ元気そうで本当によかった。
じいちゃんから「健康に気を配るんじゃぞ、それがいちばん大事なことじゃ」と、ありがたい言葉をいただいたので、酒飲みの私は「少しくらい節制するか」と思った。自分を顧みずに、人の心配をしていたのがバレたのかもしれない。