見出し画像

ハイヒールはもう履けない

私はヒールの高い靴が好きだ。
見るのも、履くのも。

直線的なヒールと曲線的なソールの対比が美しいなあと思えるし、履いた時にスタイルが良く見えるのも嬉しくて高校生くらいの頃から外出する時はヒールの高い靴を履くことが多かった。

それが途絶えたきっかけは感染症の流行だった。

仕事は在宅勤務になり、外出といえばスーパー程度…。
そうなると服装もどんどんカジュアルになっていき、それに合わせて靴もハイヒールのパンプスからローヒールのパンプスに、パンプスからスニーカーに、スニーカーからぺたんこのサンダルにと変わっていった。

それが数ヵ月前に転職したことで、在宅勤務から一変して毎日出社することに。

久々にハイヒールに足を入れると…。

「えっ?無理」

咄嗟に口から出たのはそんな言葉。同時に足も抜いてしまった。
自分の足が悲鳴を上げたというか、直感で「無理」だと思った。

あんなに頻繁に履いていて、なおかつ大好きだったもの。

知らない間に自分がそれを受け入れられなくなっている感覚は寂しい、悲しいというよりは呆気にとられたといったところ。

今の私は1~2cm程度しかないローヒールのパンプスを履いて毎日出勤しているうえ、スニーカーで出社できるカジュアルデーに大喜びする始末。
どれだけ服装規定がゆるい会社にいても好んでハイヒールを履いていた頃の私がそれを知っても信じられないだろうなあ。

造形が好きなことに変わりはないので、今でも手持ちのハイヒールを見ると心はときめく。
けれど、きっと履くことはもう無いのだろうなあ。

大好きなものとの別れがこんなにあっさりしている事があるんだなあと思い、ふわふわとした喪失感を感じたお話。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?