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人間歯車の夢

小学2年生のとある夜
初めてその夢を見た
薄暗い空間で私は立ち尽くしている
その空間は始まりも終わりもなく続いている
振り返ると遠くから何かが転がってくる
いくつもの丸い何かが音もなく向かってくる
だんだん近づく無数のそれは人間だった
人間が体を丸めて歯車のように転がり続けている
ついに私の目の前まで来たが
そのスピードは全く落ちる気配がない
おびただしい数の人間が私の横を通り過ぎていく
その目は見開かれたまま
無表情で真っ白な顔
何も言わず
ひとつも音も立てず
ひたすら回りながら猛スピードで転がり続ける
立ち尽くす私の存在にも気づかぬ様子で

しばらくすると目が覚めて
自分が泣いていることに気づくのだ
それから何度も何度もこの夢を見た

17年後の今日全く同じ夢を見た
数日前まで会社員だった私は布団の中
三年間の激務に耐えかねてついに壊れてしまった

歯車の彼らは一体何を伝えようとしているのだろう
彼らはいつまで走り続けなければならないのだろう
彼らはどこへ何のために向かっているのだろう
私はいつまでこの夢を見続けるのだろう

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