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エブリデイ大原美術館 7日目〜少女の恥じらい〜

彼女は待ち伏せをしている。
私はしばらくの間、気付かずにいた。
大原美術館・本館の入り口、入ってすぐの裏側に息を潜めて立っている。

今日の作品は、ジュール・フランドランの「花を持つ少女」

画面に対して、少し大きめに一人の少女が小さな花束を持って立っている。
少し大きめの黒い帽子を被り、
白にブルーの模様が入ったワンピースを着ている。
少女とは言え、目鼻立ちはしっかりとして、焦げ茶色の髪の毛は長い。
向かって右の肩からは、花を持つ手のあたりまで髪の毛が描かれている。

目線がない

私は気付かずに通り過ぎていたのには、理由があった。
彼女には目線がない。気配を感じなかった。
目は俯き、絵に描かれているのは、その長いまつ毛。

目を閉じているようにも見えるが、おそらく違う。
俯いているようにも見えるが、それも違う。

彼女はばつが悪そうに視線を落としたり、
目線を上げたりしてるのだと思う。
彼女からすれば、画家のおっちゃんから花を持たされて、
じっとしていて!と頼まれた。

ここは牧場、木陰で少女

背景のように描かれているのは、牧草地。
少し枯れかけた色をしている。
よく見ると牛が数頭いる。
こっちをみている牛もいれば、寝転がっている牛もいる。
樹は描かれていないが、足元を見れば、樹の影のように見える。

花束は自然?不自然?

画家「少しの時間なので、これ(花束)を持ってこっちを向いていて」
少女「・・・。はい・・・・。」
花束はここに生えていたものだろうか?

花束の中心にあるのは、白い花びらの中央が黄色の平べったい花。
左側には、オレンジ花びらに中央が紅い花。
右側には、鈴型の花びらをつける赤い花。
青々した緑の葉をつけている。

画家「ここに来る途中で、綺麗な花を買ってきたんだ」
と言いながら手渡しのではないかと推測。

少女は女性として描かれそうだった

髪が長い、髪を伸ばしているのは、
少女の証、潔白・純粋なイメージを持たせる。
長い髪を隠すような大人びた少し大きめの黒い帽子。
お母さまの帽子を借りてきたのだろうか。

白にブルーの模様が入ったワンピース。
肘から先に見える腕と手先。
繊細な指先ではなく、まだ少女の可愛らしさがある。
肌の色は、木陰だからかもしれないが、白いとは言えない。

唇を噛むほどの恥じらい

目線を上げないだけでなく、軽く唇を噛む表情。
彼女は、画面中央で、真っ直ぐ立っているように見える。

気のせいかもしれないが、
帽子の角度、顔の角度、肩の角度、腕の角度は、
右から左、左から右と交互に傾き、
全体で見れば真っ直ぐ立っているように見える。

何かばつの悪さを、もじもじとした感情を与えているのかもしれない。
「もじもじ」というオノマトペは、「も」から「じ」へ変化する様子は、
左右へ体を揺らし、もじもじしている様子を表している。

少女と花

世の中には、少女に花を持たせた絵画がたくさん存在する。
自然の美は、どちらに軍配を上げるのか。
単なる対決ではなく、比較することで、
生きることの美しさや儚さなど多くの表現が生まれそうだ。

今回は、少女の純粋さや未熟さ、これから花開く蕾のような存在を感じた。
ワンピースは、はじめ模様のない白だったのではないかと思うほどに。
帽子も不自然な花束も、全ては少女の気恥ずかしさを演出している。

塗り絵があります

エブリデイ大原美術館 6日目はこちらから

大原美術館に毎日通うことになった




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