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不確定日記(一駅じゃ足りなかった)

 すっかり暖かいが、ホルモンのバランスが崩れた時特有の眠気と頭痛がある。春は黄色い花粉のイメージと共に、生命力、というかまあ性的なざわめきを感じて気圧される。生き物だから仕方がない。

 歩くと何かしら達成した気持ちになるので、何もしなかった日の翌日は歩きがちだ。ちょうど一駅先に用事があったので、歩いてゆく。長袖Tシャツに薄いコートでも暑かった。先日の雨で溶けたダンボールが自動車に引き摺られた跡が地面に残っている。知り合いの展示を見にゆくので、まず手土産を買う店を地図アプリの目的地に設定する。
 私の住んでいるあたりは古い一軒家が多くやや平らで、信号を渡ると急な坂道の両脇には堅牢なマンションが多い。下り切ると川と線路で次第に賑やかな商業地になる。学生が多い街なので、大盛りで油や味の強そうな飲食店が多い。途中で何か食べようかと思うが、休日なのでどこも混んでいる。アプリの目的地点をいつのまにか通り過ぎているので見回すと、目当ての店はシャッターが閉まっていた。別の菓子屋を設定し直してまた歩く。途中でインド系の食料品店に気付いたが先を急ぐと、そちらの店も閉まっていた。和菓子屋は日曜日には休むものらしい。覚えておくことにする。落胆してインド食品店に戻り、何かを取り戻すために袋いっぱいスパイスなどを買ってしまう。手土産は近くの高級スーパーでビールとつまみを買い、足が疲れたのでファーストフード店で少し休む。レモネードがおいしかった。

 展示の会場は古い一軒家をそのまま使っていて、おそらく店舗だったのだろう土間の奥に炬燵が置いてあり、2階にも和室がいくつかある。そこここで作家とその家族友人が酒を飲んでいて、私もなんとなくふらふらして缶のジントニックを一本飲んだ。

 帰りは坂を登りたくなかったので一駅電車に乗り、帰って歩数を見たら一万歩は行ってなかったので、いまいち達成した気持ちにはならなかった。実に3月31日である。

そんな奇特な