腹八分目のマネジメント
私は常々、自分自身と他人に対する期待値の管理に、腹八分目の物差し(価値観)を採用しています。元々「腹八分目」という言葉は、食事にまつわるたとえから来ていますが、ここでは仕事や日々の生活の中で、自分や他者に抱く期待に対する心持ちを指します。これは、過度の期待やプレッシャーを回避することで、個人の自由や創造性を尊重しながら、同時にストレスを減らすことを目的としています。日々の中で不用意に感じるストレスも、何かの病いの前兆とすれば、この腹八分目も医者いらずです。
前提として。腹八分目のマネジメントの採用は、自己や他者に対する「期待値の価値観」です。そもそも全力を尽くさない、八分程度の働きを容認するものではないため、採用には注意が必要です。
理想
例えば、仕事環境の場合、自由な環境が生産性や創造性にプラスの影響を与える人たちと一緒に働くことは、非常に魅力的です。目標自体はストレッチも利かせて高めに設定し、常に最善を尽くしますが、日々の行動計画に際しては、自分も他者も、全力を出し切れない場合があることを加味します。自分の中に余裕を持たせることで、創造力を働かせる余地を残し、不用なストレスを軽減します。
現実
自由は、多くの場合、生産性や創造性の源泉になると期待されますが、すべての人にとって常にプラスに作用するとは限りません。自由には、各自がそれをどのように扱えるかによって、幸福にも不幸にも感じさせる側面があります。結果、自由と期待のバランスを取ることには難しさがあり、人は、自分の意図しないタイミングで期待以上の自由を与えられると、方向性を見失いがちになったり、また期待を過度に設定すると、ストレスを感じるリスクを持ち合わせています。腹八分目の価値観の採用に際しては、「八」を七もしくは、状況に応じてそれ以下の数値とするのが適切な場合も生じます。
腹八分目の期待値の有用性
腹八分目のマネジメントの有用性は、自分や他者に抱く期待値の管理や認識を数値で管理をすることで、結果として発生し得るマイナスとも捉えられる事象の発生を想定の範囲内とし、それによる不要なストレスの発生を未然に防ぎ、また、失意等を含む、自身のパフォーマンスの低下を回避することにあります。
例えば、自分や他者が、本来の期待通りに役割を果たせば、達成し得ると思われるプロジェクト計画についても、日次においてはその通り"腹十分"ではなく、何らかの事由により腹八分の着地となる可能性を視野に基準として認識します。これにおける効果の一つは(心持ちとしては)腹八分目を設定としていた事により、八分のパフォーマンスにも感謝の思いを持てることです。
まとめ
腹八分目のマネジメントは、私たちが自由に働き生きていく上でのバランスを見つけるのに役立ちます。目的は、認識としての期待値を設定することで、過剰なプレッシャーや期待から自身と他者を解放し、各自が自分のペースで最大のパフォーマンスを発揮できる環境を育むことにあります。表現を変えれば、この価値観は、先ず個人としての持続可能性を促す、自由を生かすプロジェクトマネジメントです。自由を有効に活用するには、自己管理能力と責任感が必要です。また、プロジェクトを正しく進めていくためには、適切な時間管理や、リソースの配分、目標設定やフィードバックの獲得等、それぞれに検討・把握すべき内容がありますが、それにはそれで枠組みがあります。
「腹八分目の期待値」の価値観を持つことで、創造性を発揮する余地をもち、互いの自由を尊重する環境を育てることができますように。❀
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