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言言 第六回公演『蛇と天秤』 演出ノート

『ほつれる、闇』が終わって3週間が経ち、本格的に次の作品に取り組んでおります。2018年にも演出させていただいた演劇ユニット言言(kotokoto)さんの第六回公演です。上演作品はパラドックス定数の野木萌葱さんの『蛇と天秤』。今回は“メディカルサスペンス”です。

前回(2018)は五反田団・前田司郎さんの名作『びんぼう君』でした。

びんぼう君

写真左に写っているのが言言主宰の飯沼さん。LondonPANDAにも何度も出演していただいてます。大きい身体と優しい心。素敵な俳優さんです。

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さて、演出として再び呼んでいただいたからには全力を尽くすつもりなのですが、俳優が素晴らしい布陣なので、何もやることが無いんじゃないかとすら思っていました。白鳥英一さん、武田らこさん、原西忠佑さんとは初めての芝居づくり&お三方とも念願のお相手。芝原弘さん、飯沼由和さん、キサラカツユキは『ほつれる、闇』から引き続きの現場&複数回ご一緒している間柄なので、共通言語がある状態です。

稽古場

*左から芝原さん・飯沼さん・武田さん・原西さん・キサラ・白鳥さん

稽古初日/顔合わせの日にセリフを全部入れてきた原西さんを筆頭に、全員やる気に満ち溢れている健全な環境です。いつもは時間通りに終わる、もしくは予定より早めに終わることの方が多いのに、今回は珍しく3時間じゃ足りません。

90分間、現代口語の対話劇です。冒頭でも書いたとおりメディカルサスペンスなので、医療界の専門用語なども出てきます。少しでも気を抜くと、あっという間に展開が分からなくなってしまいます。そうならないように、とにかく丁寧に丁寧に積み重ねています。

「なんで、ここでこんなこと言うんだろう?」

「なんで、この人は黙ってみてるんだろう?」

「このダッシュ(————)は、何を意味してるんだろう?」

「この、それじゃあ、は口をついて出たものか?接続詞としての意味を持つのか?」

「?」のセリフに台本にどんどんと付箋を貼っていき、整頓しています。

だいほん

俳優に訊くと、自身が持ってきた答えを必ず言ってくれるので、そこからさらに掘り下げていきます。そうなってくると稽古時間内では間に合わず、宿題にすることも。そうしてみんなで戯曲読解に取り組んでいます。

この「みんなで」というのを大切にしてます。与えられたルートから生み出す言葉よりも、自分で獲得したルートで自然と湧き出る台詞の方が忘れないし嘘が無いから、演出はあくまでサジェッション(提案)に留まるのが理想なのです。

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それと並行して、俳優陣の新たな一面も見たいので、さまざまに試してもらっています。「いつもはやらない選択肢を選んでください」とお伝えして、かき混ぜています。

6名の俳優さんはみんな達者なので、いつもの感じでやっても全く問題無く作品が立ち上がるんです。それは知ってるんです。それだと想像を超えないし、全員の代表作にはならない。いつもの感じ、はいつでも出来るのだから最後のチョイス/方法にしてもらい、ギリギリまで模索しながらもがきたいと思っています。

劇場入りまで、稽古は残り13回・53時間。じっくりと研ぐように、創っていこうと思います。

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書かないのも不自然なので、今の思いを最後に。

昨今の新型コロナウィルスの影響で、全国で舞台の公演中止が多く見られます。上演するのも中止するのも、相当な知識と覚悟が必要になっています。

上演までの3週間、とにかくコロナウィルスに関する情報を集約し、公演が可能であるかを主宰とも協議していきます。同時に、モチベーションを高く持ったまま、稽古しつづけたいと思います。


稽古が進んだら、また書きます。

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