指先で親しい友達リストを作るとき、私は自分が少し怖い
今日も、インスタのストーリーズには黄緑色の枠で囲われたアイコンがいくつか並んでいる。
ピンク色ではなく黄緑色なところが、健康に良さそうな気がするが、別に健康ストレッチ体操が発信されているわけではない。
黄緑色の枠で並んだアイコンをタップすると、投稿の右上には「親しい友達」と表示される。黄緑色は、「あなたは私の『親しい友達』」という合図なのである。
インスタグラムの「親しい友達リスト」
今では言わずとしれたSNS、「インスタグラム」には、24時間で投稿が自動的に消える「ストーリーズ」という機能がある。
自分がフォローしている人がストーリーズを更新すると、基本的にはアイコンがピンク色の枠で縁取られ、「見てよ見てよ」と言わんばかりに光る。
一方、「親しい友達リスト」という機能を使うと、ユーザーがストーリーズを見せたい人を制限できる。それがあの健康カラー、黄緑色なのだ。
この機能は数年前に突然登場し、私の周りでも多くのユーザーが使っているし、私自身も使っている。
使い方は様々だ。その名の通り、「親しい友達」にしか見せたくないときや、一部の人間にしか言っていない話題を投稿するとき、同じサークルの人間にだけ知らせたいとき・・・
「親しい友達」は流動的だ。私は事務的な内容の投稿も多く、その対象の範囲によって「親しい友達」リストをよく組み替えることがある。
なので、現実ではあまり話したことがない人も、投稿の都合上「親しい友達」になることはある。
だから、黄緑色の枠で縁取られたストーリーズが出現しても、「あの人にとって私は親しい友達なんだ♡♡」と思うことはあまりない。自分がそれに選ばれなかったとしても、ショックも受けない。
でも、自分が「親しい友達」リストを作成するとき、私は少し自分が怖くなる。私はこの指先で、誰かを「選び」、そして誰かを「排除」していることに自覚的にならざるをえないからだ。
「親しい友達リスト」は必ず誰かを排除する
私は一度、海外の一人の友人を「排除」するためだけに、「親しい友達リスト」を使ってしまったことがある。
その友人とは、海外に短期留学したときに色々お世話になって親しくなったが、帰国後あまりにも連絡がしつこくて(今はほどほどに連絡をとる仲です!!!)LINEを無視したことがある。
すると、友人から今度はインスタのDMで「なんでLINEで既読着かないの?」と連絡が来てしまった。そこで「ごめんね」と言えればよかったのに、私はその後のやりとりが面倒くさくて(最低)またまた無視してしまったのだ。
そのままLINEにもインスタでも返事をしないまま、数日が過ぎた。インスタに何も投稿しなければ、インスタを開かなかったので気づかなかったことにできるので(ホント最低)しばらく放置していた。
だが、数日経って、私にストーリーズで投稿したいことができてしまった。
「今投稿したら、意図的に放置していたことがバレてしまう・・・。」
そこでタッタラー♪と頭に浮かんだのが、「親しい友達リスト」だった。親しい友達リストで、友人と、その友人が親しくしている人をリストから「削除」すれば、その人達に知られずに投稿することができる。
私はその計画を実行することにした。
そして、無事に投稿を終えたものの、私は胸の中がモヤモヤした。
「私、何をしているんだろう」
おそらく、私がその友人とその周りの人を、「親しい友達リスト」から「意図的に」外したことは、誰にもわからない。「親しい友達」が誰なのか、投稿者以外わからないようになっているからだ。
でも。
海外で一人不安な時、色々お世話になった人たちなのに、私はなんてことをしてしまったんだろう。
きっと彼らを「親しい友達リスト」から「排除」するとき、私の目は笑っていなかったと思う。
冷たい目をしながら、私は指先一本で、友人を「選び」、「排除」するという、その人達の前では絶対にできないことをしてしまったのだ。
「王様」であることを自覚する
結局その友人とは、紆余曲折あって今ではほどほどに連絡をとる仲に落ち着いた。でも、例の一件は言えずにいる。
この一件により、私は「親しい友達リスト」が人を「選んでいる」だけではなく、「排除」できてしまうことを自覚した。
「親しい友達リスト」が悪いとは思わないし、私も公開範囲を限定して投稿したい場合があるので、今後も活用していくと思う。
ただ、自分が小学生、中学生、高校生の時には、自分一人が「王様」になって、人を選んだり、排除したりする経験は簡単にはなかったと思うのだ。
誰かを選んだり、情報公開を限定的にする場合には、みんなで投票して誰かを選び、それ相当な理由や根拠があって情報を内密に共有したりしたと思う。
でもインスタグラムのアカウントでは、自分が一番の王様で、
人を「親しい友達リスト」という名前の枠に入れたり入れなかったりが、簡単に、しかも「この人は入れたくないから」という理由でできてしまう。
私も今は大人なので、誰かの「親しい友達リスト」にいなくても、「まあそういう気分ってあるよね、わかる」と思えるけれど、
自分が中学生や高校生の時にこの機能があったら、発狂してしまうと思う。「なんで?どうして?私何かしちゃった!?!?」と。
それが思わぬ誤解や、いじめにつながったりもすると思うのだ。
人間なので、どうしても「他の人には言えぬが、聞いて欲しい」という気分になるのは当然だ。
でも、インスタグラムのアカウント上では、
自分が明らかに誰かの首をつまんでいて、指先だけでリストから削除したり、追加したりすることができる、一人の王様になってしまっていることに、自覚的であるべきだ、とも思うのだ。
おわり
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