寒波の夜と焼きリンゴ
「年末は大寒波になるらしい。」
夫から天気図が送られてきて、我が家の帰省はあっけなく中止となった。
私は正直うれしいけれど、あんまり顔に出さないよう気をつけている。予定では30日に移動だったため、冷蔵庫はほとんど空っぽ。冷凍のお肉と、日持ちのする野菜くらいしか残されていない。
慌ててお蕎麦と蒲鉾だけ買ってきたので、今夜は玉ねぎと人参をかき揚げにして、年越しそばとしよう。甘いお揚げも準備しよう。
寒い夜、湯気が上る鍋。
想像だけでにんまりとする。あ、そういえば…と冷蔵庫を再び開けると、野菜室の奥に立派なリンゴがあった。お友達にいただいたんだった。
芯を包丁とスプーンでくり抜いて、はじっこを摘んで口に入れたら瑞々しくおいしかった。くり抜いた穴にきび砂糖を詰めて、バターの欠片で蓋をする。
200度にあたためたオーブンで30分。バターがとろりと溶けて、部屋中にリンゴの甘い香りが漂う。フォークとナイフで切り分ければ、寒波の夜もなんのその。ただの美しい夜になる。
お蕎麦を食べた後のデザートにしようかな。先に食べて、甘くなった口でお出汁をすすろうかな。
おいしいものを楽しく食べて、良いお年を。
今年もありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?