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「推し」がこわい

「推し」はこわい。高揚し舞い上っているうちに、お金を吸い取っていく。

きゃ〜!と娘がアニメイトで歓喜の声を上げた。頼りないアクリル板と、これまたアクリル製のキーホルダー。2つ合わせて3000円。思わず二度見してしまった。小学生がコツコツ貯めたお金を、アクリルに注ぎ込ませる「推し」。こわい。容赦がない。

が、娘が自分で貯めたお小遣いの範囲で買うのだから問題ない。何に価値を感じるかは人それぞれ、自由だ。むしろ推せるものがあるって喜ばしいじゃないか、ウン、となんとか自分に言い聞かせる。

そのあと立ち寄った服屋でも、娘は歓喜の声を上げた。「え!やだ!このパーカーめっちゃかわいい!かわいくない?推しカラー!!」

彼女が服に興奮するのは珍しい。どちらかと言えば、こちらから促してはじめて、悩んで買うことが多い。高揚した様子で鏡の前へ移動し、体に当てる。デザインが凝っていて確かにかわいい。ダボっとしてるのも、娘の細い体にはよく似合う。(お値段はちっともかわいくない)

「これ、かわいいですよねぇ〜私が着てるのも色違いなんですよぉ〜試着します?」と店のお姉さんに促され、娘は試着室へ吸い込まれた。

しばらくして着替えた娘が顔を出し、私も中を覗きこむ。「かわいい!かわいい!この色すき!かわいくない?」とぴょんぴょんと跳ねている。かわいいのはお前だ!!!気がつけば、パーカーも当たり前のように娘のものとなった。

私は娘を推して、もう12年になる。

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