25元の夕涼み

あの夏、タピオカミルクティはたったの25元だった。日本円で100円もしない。500mlたっぷりと入っていて、もちもちとした食感が空腹を満たす。

留学先の学校から台北駅まで、地下街を歩く。電車賃とミルクティ代が同じだったから、電車には乗らず、ペコペコとへこむ薄いプラカップを選んだ。冷たく甘い液体が、汗ばんだ体に溶けていく。

灼熱の太陽と排気ガスを避けて通る地下街には、小さな店が軒を連ねていた。貸し漫画屋や文房具店を覗きながら、友人と他愛のない話をする。

集団でいる時のしんどさが、1:1の時には無かった。2人だけの一本道、冷たいミルクティを飲みながら歩く時間が、絡まった心を落ち着かせてくれた。

台北駅に着く頃には、カップは空になっている。冷ました体を再び熱風に晒すまで、わずか15分の夕涼み。駅裏の学習塾へ、学生たちが吸い込まれていく。私は鉄道に乗り、南下して家路につく。

#旅する日本語 #涼み客 #旅

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?