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超短編小説もどき

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小説もどき?のもの。
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#小説

冷たい優しさ

「僕は何も変わらないよ。どうしたの?」 大好きだった優しい目が、とてつもなく冷徹で、まるでアンドロイドみたいだな、計算している、と思った日から、離れようと決めた。 わたしは、利用されたくない。あなたの優しさを誰かに見せつける格好の相手なだけになりたくなかった。こっちは傷ついて、あなただけが得をする。そんなバカなことを許せなかった。 好きだった。大好きだった。あなたの優しさに確かに救われた。 でもわたしじゃなくてもいいなら、他でいいじゃない。きっとまた同じように騙されて

自分じゃない香り

ふわり、ふわり。 動くたびに香る、自分じゃない匂い。 良い匂いなのに、どこか落ち着かない。 良い匂いなのに、自分との不釣り合いさに、吐き気が込み上げる。 死ぬほど汗をかいた日に、わたしからこんな匂いがするはずなんかない。 「これは万人が好きな香りと言われてまして、お客様の雰囲気ともお似合いだと思います。」 マスク越しにでもわかる、美しくて、綺麗で、声色の優しい販売員さんにそう言われて、万人に愛されるのなら、なんて、浮かれて買った香水は、わたしの汚さを引き立たせるだ

聖母の微笑み

いつも静かに微笑みを絶やさず、 賢く、聡明で、囁くような声が優しく響く、 そんな彼女はまさに聖母だった。 遠巻きにしか彼女を見ることはできない。 儚すぎて消えそうで、近づくことができない。 いつものように彼女は前の方に座り、授業を受けていた。さすがは成績優秀、周りの子たちにいつもの聖母の笑みを浮かべていた。 そんな様子を視界に入れながら、教授の話をぼんやり聞く。今日は神様の話か? 小テストだ!?不意打ちは勘弁してくれよ…。 記述問題だったので、うんうん唸りなが