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#15 シナイ山で死にかけた話⑩

ついに到着、シナイ山の麓(ふもと)。

記憶はあやふやですが、確か夕刻くらいだったと思います。
 
シナイ山の麓は、Saint Catherine(サンタカテリーナ|セントカテリーナ|聖カタリナ|聖カトリーナ|聖エカテリナ)という町というか集落がある。
 
日本語表記にすると色んな発音になるのは、ヨーロッパ系の言語のルーツが同じで、Michaelが、マイケルだったり、ミッシェルだったり、ミカエルだったりするのと同じクダリです。

Saint Catherineってなんぞ?

この場所がSaint Catherine(以下、サンタカテリーナ)と呼ばれる理由は、ここに聖カタリナという世界遺産に登録された修道院があるからです。

この聖カタリナ修道院は6世紀頃に東ローマ帝国のユスティニアヌス1世の命によって建設されたキリスト教正教会最古の修道院であり、現在まで継続して修道院として機能しています。知らんけど。
 
シナイ地域は、ルーツが同じ、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教の3大宗教から神聖視されていて、聖地巡礼的に訪れる人が多く、この聖カタリナ修道院を中核に巡礼者応対用に小さな集落が形成されています。住む集落というよりは、観光用の集落ですね。知らんけど。
 
聖カタリナ修道院は、進撃の巨人に出てきそうな城塞都市のミニチュア版といった感じで、エモのエモです。ま、私は進撃の巨人を読んだことはないんですけど。

画像を勝手に使ってはいけないでしょうから、興味がある方はググってください。

巡礼者のルーティーン

巡礼者や観光客のお目当ては、シナイ山に登り山頂でご来光(日の出)を拝むこと。
 
シナイ山の高さは2285m。2000m級の登山は大変と思われるかもしれませんが、これがそうではない。なぜなら、サンタカテリーナの時点で標高はすでに1500m程度であり、実質登るのは800m程度に過ぎないからです。
 
登山に必要な時間は3時間程度。ご来光をターゲットに登るとなると丑三つ時(午前2:00~2:30)くらいにサンタカテリーナを出発すれば良いわけです。
 
よって、巡礼者は宿をとり(確か修道院自体に昔は泊まれた記憶だが、世界遺産になったのは2002年らしく、今は無理になったのか?)、部屋でゆっくりして登山用装備だけで夜半に登山を開始することになります。

俺らのルーティーン

しかし、私たちはそんなことはしません。
 
何故か?
 
貧乏だからである。
 
寝るわけでもない宿に金を払うなど言語道断、無駄無駄無駄無駄無駄。
 
サンタカトリーナを徘徊し時間を潰すも、こんな小さな集落でそんなに時間を潰せるはずもない。
 
日が沈み晩飯を食い終わった頃にはもうすることがない。
 
ドラクエばりに話を聞いてまわると、どうもシナイ山頂には小屋があって毛布も貸してくれるらしい。

結論。
 
もうシナイ山に登ってしまって山頂の小屋でだらだらしよう。

 
察しの良い方はお気づきだろう。この判断が死にかけるもとになるのである。

一番槍こそ武士の誉

でっぱつ(出発:「特攻の拓」風)。
 
我々は宿もないので全荷物を携えての登山である。

私とマナブとTはバックパックなのでまだマシだが、ユウキにいたってはボストンバックを抱えての登山である。エジプトに行くのにボストンバックで来るユウキが悪い。

砂漠地帯の高地なので気温は寒く、一応持ってきた激安の防寒着を羽織る。ユウキは冬の韓国に行くつもりだったのでしっかりしたダウンジャケット。ここだけは有利である。
 
こんな時間から登山を始める奴らは見当たらない。

シナイ山の登り方

シナイ山に登るルートは二つある。
 
ひとつは、「ラクダの道」と呼ばれる、距離は長いが緩やかなスロープのような道を進むルート。その名の通り、ラクダ屋さんがいて、ラクダで登ることも可能です。
 
もうひとつは、「悔い改めの階段」と呼ばれる、距離は短いが3750段以上の険しい自然石を登るルート。
 
ふたつのルートは7合目で合流し、最後の750段は皆自力で登ることになります。

齢40を過ぎ、悔い改めることが増えてきた今の私であれば、迷わず「悔い改めの階段」を選び、一歩一歩噛み締めながら登山をしたことでしょう。
 
しかし当時の私たちはまだ二十歳そこらでたいして悔い改めることもありません。行きは「ラクダの道」、帰りは「悔い改めの階段」で、両方味わおうぜ、という話になりました。

登山道入り口

登山道入り口に到着、時刻は21:00くらいであろうか。
 
入口にはのちほど来るであろう巡礼者を目当てに、ガイドやラクダ屋さんが商売の準備をちらほら始めている。
 
うーーーん。アラビアンナイトみたいで、ラクダに乗って登るのは、控えめに言ってありよりのあり。
 
金の使い方はメリハリが大事。
このあたりがしっかりしていない奴は事業も成功しないし金持ちにもなれない、これは今も尚私の持論である。
 
物欲しげな目でラクダを見ていると、ラクダ屋が気づく。
 
「おめーらまだ登るには早えーぞ。宿帰って時間経ってから来な。」
 
「そんなもの(宿)はない。もう登りたいのねん。」
 
「知らねえぞ。まあ他の客もまだいねーし、おめーらが行くってなら構わねーけどな。」
 
安めの金額で交渉成立です。

フタコブラクダとヒトコブラクダ

しかしラクダ4頭をハイヤーするほど予算はありません。
 
2頭とし、二人が乗って、二人は歩く、これを交互にすることに決めました。
 
ラクダはフタコブラクダとヒトコブラクダに分かれ、その名の通り、コブが二つあるのがフタコブラクダ、一つなのがヒトコブラクダです。
 
日本人的なイメージはフタコブラクダがラクダのイメージで、実際日本国内にいるラクダはフタコブラクダが多いようですが、世界的な分布でいうと、ヒトコブラクダが9割、フタコブラクダは1割に過ぎないそうです。
 
なんか目がチカチカしてきた。
 
この時いたラクダはフタコブラクダの印象。しかし、先日このNoteを見ていたマナブから久しぶりに連絡があり、なんと当時の写真が少しあったとのことでもらったのですが、写真を見るとこれはヒトコブか?見てもイマイチどっちか断定できない。
 
ちなみにフタコブラクダはコブとコブの間に乗ることができますが、ヒトコブラクダは乗れるところがないので、ひとつのコブに鞍(くら)を引っ掛けて乗れる座をつくります。

VUITTON on da CAMEL

ここで奇妙な光景を目撃した。
 
ラッキーとばかりに、ユウキがヴィトンのボストンバックの取っ手をラクダのコブにねじ込んでいる。

するとあら不思議、ヴィトンのボストンバックはラクダのコブにジャストフィットするのである。
 
世間広しと言えど、ヴィトンのボストンバックがラクダのコブにねじ込まれることは中々見ることはないのではなかろうか、それともこれだけジャストフィットするということは、ヴィトンはラクダのコブにねじ込まれることを想定して作られているのであろうか。
 
いずれにせよ、これが後世まで(私たちの中だけで)語り続けることになる
 
「VUITTON on da CAMEL」爆誕の瞬間である。

それでは奇跡的に発見されたその写真をここでご覧頂こう。

ラク乗はマナブ選手 ヒトコブか?

ラクダトリビア①

ついでなので、個人的な経験からのラクダトリビアをご紹介しておきましょう。
 
ひとつ、ラクダは2段階で立つ。
 
ラクダは背が高いので馬とは異なり、座った状態で人が乗って、そこからラクダは立ち上がります。
 
ここで注意しなければいけないのが、ラクダは2段階で立つということ。
 
ラクダは前脚も後脚も正座スタイルで座る、日本人気質、ないし禅の精神をもったやつです。
 
立ち上がるときは、まずは前にぐっと重心をかけつつ「おらぁ!」と後脚だけ立ち上がり、前脚は膝立ちの状態。そして、その後に「おらぁ!」と前脚を立ち上げます。
 
一発目の「おらぁ!」で油断しているとむち打ちクラスの反動がありますし、立ち上がったと思って油断していると2度目の「おらぁ!」で落馬、いや落ラクダの可能性もあるので注意しましょう。

ラクダトリビア②

ふたつ、ラクダの頭はブヨブヨ。
 
ラクダの頭頂部を触ると、めちゃくちゃブヨブヨしています。
 
ラクダのコブは脂肪の塊で、ここで暑さを和らげたり、水分を蓄える仕組みらしいです。
 
これと相関性がありそうですが、直射日光があたる頭頂部は相当ブヨブヨしていて、これ脳ミソ直で触ってない?という不安に駆られます。
 
大丈夫。ブヨブヨの下にはちゃんと頭蓋骨があります。知らんけど。
 
みっつ、ラクダの口元はきちゃない。
 
おっと、ラクダトリビアを書いていたら(自分的)文字数制限を超えていました。
今回はこれくらいにしておきます。
 
シナイ山についたものの、麓のサンタカトリーナ話で油を売ってみました。
遅延行為はこれくらいにして、次回はいよいよ登り始めます(登るとは言っていない)。

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