見出し画像

「$建リブラ」に「ビットコイン」「金(Gold)」「トルコリラ」

 ”フェイスブックが主導するデジタル通貨「Libra(リブラ)」が早ければ2021年1月に限定的にスタート” フィナンシャル・タイムズ(FT)@11/27

 2020/10/10 「日銀、2021年度にデジタル通貨で実証実験 欧米中銀と3原則」 ↓ 以来の「デジタル通貨」に関する投稿である。余り目立ったニュースがない中、年の瀬が押し迫ったこの時期に「$建リブラ」の記事 ↑。来年1月にも限定的ながら発行されるかもしれない、と言う。

 もともと*5通貨の「通貨バスケット制」を謳い、あわよくば「銀行覇権」も奪おうかという「野心」を持って始まった壮大なプロジェクトだったが、当初の計画は米銀行界の猛反発に遭って一度頓挫した

 通貨バスケット(担保金):$50% €18% ¥14% £11% S$7%

 そこへ「デジタル人民元」が急ピッチで動き出し、日欧でも「デジタル€」「デジタル¥」の計画が矢継ぎ早に前倒しされた。この状況下での「$建リブラ」発行にはやや拙速の感は拭えないが、これまでの膨大な投資分ぐらいは回収したいのかもしれない。

 これと平仄を合わせるように動き出したのがビットコイン(BTC)だ。価格が急騰し再び$20,000(200万円)を伺う勢い。

ビットコイン(6年)

 PayPal が BTC を扱う、というニュースが入って来た時は「 BTC の流通が格段に増えるのではないか」との期待が一時高まった。例えば通貨が100分割されて$100単位で使えるようになれば面白いなと思ったが、今のところ ”お買い物” など日常生活用に使える目処は立っていない。そもそもマイニング(通貨の発掘作業)が需要に追いついておらず、それが価格高騰の一因との見方もある。本格的に利用が広がった場合、これらのコストを誰にどう徴求するのかも以前見えないまま。

 高値から突然▼9%以上も急落したりと、 BTC は ”相変わらず” の暴れぶりだが、今回は前回までの急騰とは少し ”違う側面” がある

 同様に ”オルタナ”(Alternative、代替投資資産)として扱われてきた「金」(Gold)を見ると前回との違いがはっきりする。2019年までは BTC と Gold は同じような動きをすることが多かったが、今回は違っている。

金(5年)

 今回 Gold は既に$2,000近辺でトップをつけ値がだれてきている。よく為替市場での「ドル安」と反比例して上がると言われているが「米ドル指数」を見るとまだ「ドル安」傾向が続いているのに、である。

米ドル指数(1年)

 それでは2019年と今の大きな違いは何か? そう、「過剰流動性」だ。「損切丸」をお読みになっている方の中にはピンと来る方もいらっしゃるかもしれないが、2019年のように「過剰」にお金が余っていれば、BTC+Goldの同時高も可能性大だが、「適正流動性」になれば「どこかが上がった分は必ず他のどこかが下がる」ことになる。 

 そう考えると、今回の BTC の急騰は世の中で「デジタル通貨」への関心が高まったタイミングでの「仕掛け」と見るのが妥当かもしれない。「$建リブラ」もそうだが、まだ各国中央銀行が取り組む CBDC (Central Bank Digital Currency)との連関性も不明なまま。ここで Bet(賭け)するには不確定要素が多すぎる。 Gold が一緒に踊っていないのも象徴的だ。

  ”オルタナ” でもう一つ面白そうなのが「高金利通貨」。今一番 ”HOT” なのはトルコリラだろうか。先日中銀総裁が首になったかと思ったら相場が戻り始め、+5%の利上げを決定した時は少し驚かれたかもしれない。

トルコリラ円(長期)

 だが金利と為替に詳しい方から見れば、これだけで不十分なのは明らか。何せ2007年の@96円台から@13円台まで価値が8分の1近くまで落ちている通貨である。例えばスウェーデン中銀(RIKSBANK)は1992年「欧州通貨危機」時に公定歩合を@500%に引き上げたトルコリラ級が本気で「通貨安」を止めたければ、少なくとも+10%以上の二桁の利上げが必要だろう。

 仮にトルコ中銀20%30%と金利を引き上げていけば、投資家はその「本気度」を買いにいくことになる。そうなれば立派な ”オルタナ” だ。そうなると「ドル売り」になるため、為替市場にも影響が出るだろう。

 「過剰流動性」が支配していた2019年までなら他市場の動きはさほど気にする必要がなかったが、「日本からの供給」が途絶え「適正流動性」に移行している現在は「何かが買われれば何かが売られる」蓋然性が高い。リスクの高さから考えると「トルコリラ買い / BTC売り」なんて展開も十分有り得るので注意が必要だろう。

 「$建リブラ」については実現の可能性も含めてまだまだ未知数だが、1つ気をつけなければならないのは「法定通貨ドルと本当に ”等価” になるのか」と言う点。それでなくともブロックチェーンマイニングなど「デジタル通貨」にはコストがかかる。加えて**これら「新通貨」発行の機会を「過剰債務」を抱える各国財政当局が見逃すはずがない

 **1月に1$リブラ=@1$で始まった ”相場” が、動かないと思っていたら1$リブラ=@1.5$に値上がりするような事があれば要注意。この「プレミアム」 ”何か” を示唆している可能性があるからだ。「法定通貨の減価」と捉えれば、これは立派な「インフレ政策」である。各国がこれをうまく使えば借金を棒引きにでき、反対側で現・預金が目減りする事になる。

 しかし「裏事情」でも知らない限り、これはかなり勇気を要する「ディール」だ。1デジタル円=@1.5円で買いそびれて@3円になってしまった、なんてことがあるかもしれない。

 ある土曜日の朝刊:「旧通貨は月曜日からデジタル通貨に切換。1デジタル円=@5円の交換レート設定。取り扱いは各銀行で。」

 いわゆる「預金封鎖」が布かれ、ある日突然デジタル円でしか決済できなくなる。このケースでは物の値段が突然5倍になることを意味し、国の借金1,000兆円(旧通貨)は200兆円(デジタル円)に圧縮される。まるで何かの陰謀を描いた映画のようでもあるが、これを絵空事と言い切れない「リアル」=過剰債務が存在している。「$建リブラ」がその口火でなければ良いのだが...。ちょっと気を抜けない状態で、正直気味が悪い。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?