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続・「本物の危機」の時、金利は上昇する。ー 「逃げ惑うお金」の帰結は?

 2020.3.19 「本物の危機」の時、金利は上昇する。|損切丸 (note.com) 以来の久々の続編(笑)。米国債市場で「逆イールド」などが成り立っているうちはまだまだ生温い「金利」が下がる≓「お金」が余っている証拠

 本当に 「お金」が足りなくなる? ー 米国債の「逆イールド」が示唆する危うさ。|損切丸 (note.com) なら消し飛んでしまう。

 それもこれも「株本位制」のアメリカを支えるため。ウォール街やファンドがスクラムを組んで守っているのは米経済そのものでもある。「リーマンショック」(2008)も「コロナ危機」(2020)も「お金」をばらまいて凌いできたが、今回は容易ならざる "ラスボス" が現れた。

 「インフレ」である。

 「物」の値段が上がった、というよりも「お金」の陳腐化が始まった、という解釈が正しい。 "山火事" が広がってしまい「お金」では鎮火できなくなった。いや、むしろ「火」を広げてしまう蓋然性が高く、とても厄介。

 シリコンバレー銀行(SVB)にシグニチャーバンクファーストリパブリックと次々と焼け死んでしまい、金融業界挙げて死守の構えだが、今回ばかりは相手が悪い。*FRBに「利下げ」≓「油」を求めても、鎮火のためには「利上げ」=「水」をかけ続けるしかない

 *「火」は燎原の如く広がり、欧州に飛び火。「闇金」(アングラ・マネー、Underground Money)の元締めとも言うべきスイスの大手銀行まで焼き尽くしてしまった。これでECBも他人事ではいられなくなった。こちらも「油」より「水」を選択せざるを得ない。

 困ったのは個人を含む投資家だ。「現預金」で持っていれば資産価値の目減りは免れないし、かといって株も不調、国債は売られる、ドルは上がったり下がったり...「闇金」もニッチ市場であるビットコイン(BTC)やWTI(NY原油先物)などで足掻いているがドタバタ感は否めない。「損」を回避しようと必死だが「インフレ」では打つ手が限られる

 まるで「逃げ惑うお金」どういう帰結が待っているのか

 元・専門家の「損切丸」的には、やはり米国債市場が最も危うく映る。特に1~2年の短期ゾーンは明らかに買われ過ぎ=金利が下がり過ぎ少しでも「利下げ」が遅れれば急落する懸念が強い。現在の2年米国債は2024年初~夏場にかけて▼1.75%もの急速な「利下げ」を織り込んでいるが「火事」が燃え広がっている現状を鑑みるとあまりに無謀な賭け

 もっとも行き場を失った大量の「お金」が比較的リスクの低い短期国債になだれ込んでいるのも事実。米銀の破綻で「預金」からMMFにシフトしている影響が大きい。投資家は危機回避のつもりかもしれないが「安全」とも言い切れない仮に「利上げ」が@6%に達する展開になったら…破綻したSVB同様「投げ売り」が殺到し、地獄を見ることになる

 過去のクライシス(金融危機)のパターンに倣えば、本当に「お金」がなくなって「金利」が急騰すると、投資家は株や不動産などを叩き売って高い「金利」を得ようとする。これが「ミンスキーモーメント」。だからいつも出発点は「金利」の上昇であり、日本のバブル崩壊も同じ道筋を辿った。

 特に短期金利は「資金繰り」と直結しており、逼迫状況を反映しやすい。直近だと2020年の「コロナ危機」時に株と米国債が同時に急落したのが典型だが、今後良く見ておく必要がある。

 面白いのが「円」JGB(日本国債、Japanese Government Bonds)は波風さえ立っていない。いくら日銀が買い支えているといっても不気味なぐらい静かだ。これは一重に日本人の「円預金好き」が影響している。「インフレ」になろうが「円安」になろうが銀行から「お金」が出て行かない長期「デフレ」の後遺症とも言えるが、バフェット氏が「日本」を選んだ理由には、案外こういう要素があったのかもしれない。

 では「日本」が安泰か、というとそれもちょっと違う「インフレ」は確実に日本人の家計を蝕んでおり、多少時間はかかるが「お金」が減る現象は着実に進行する。例えば年金家計だと固定額の収入に対し物価は急激に上がるわけで、虎の子の「預貯金」の取り崩しが進む。中には破綻する所も出て来るだろう。全体で見ても実質所得=賃金ー物価は▼2%以上の減少が続き、これも「お金」が無くなっていく事を示唆している。

 「借金大国」アメリカとの対比はあるが、「預金大国」日本でも変化は起きつつあり、いずれ「金利」は上昇せざるを得ない。あとはタイミングときっかけ次第。前倒しでYCC廃止を行うのが最終コストを減らず最善策と筆者自身は信じているが、国内の政治状況を見るとそれも難しいだろう。

 最悪なのは、例えば再び@150円を超える急激な「円安」で、植田日銀が「利上げ」をマーケットに迫られるような展開。そうなると「右向け右!」の日本市場は手が付けられないJGBは大荒れになること必至で、まさに「みんな飛び込んでますよ!」的な動きが加速するだろう。

 もっともそこは「投資」の面からは最大のチャンスになるはずで、今から相場展開を想定して準備しておきたい。その時はぜひ「投げる」側ではなく「拾う」側に廻りたいもの今は退屈なJGB市場だが、見落としがないようこれからも "材料" を「損切丸」に書き留めていきたい

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