見出し画像

オプション取引と相場急変動。 ー 増大する「ロビンフッター」の影響力。

 近年米株式市場では「ロビンフッター」(以後RH)が相場の主役として取り沙汰されている。語源は無料証券取引アプリの Robinhood 。2014年以来利用者が急増し、今では300万人を超えるという。「ゴールド口座」なら月額6ドルで1,000ドルの融資=「信用取引」ができるサービスもうけている。

画像1

 日本ならネット証券による株式売買。ちなみに楽天証券の口座数 ↓ 。

楽天証券口座数

 かつて「ミセス・ワタナベ」と揶揄されたFXに次いで株もネットが主流の時代だが、注目すべきはRHが「株オプション」にまで進出している事。

 株もFXと同じ「相場の歴史」を辿っている。機関投資家や企業が「ドル円」売買にのめり込んでいたのが1980~90年台ヘッジファンド →「ミセス・ワタナベ」と主役が移ってきたが、市場が成熟するに連れ単純な売買では儲からなくなり、主役はオプション(以後OP)へ「ゼロコストOP」「ノックアウトOP」など様々な商品が開発され「高利回り仕組債」にも使われるようになったが、それも今や下火になりつつある。

 「株OP」の大暴れは、9.9.問答無用の株式市場Ⅱ ↓ ご参照。日本ではソフトバンクの大量取引も話題だったが、ここにもRHの影が見え隠れする。

 「ドル円」OPもそうだったが、** ”ブーム” の始まりは参加者が相次ぎ「みんな儲かる」状態になる。だが参加者が増えるに連れ、価格には "歪み" が生じ(OPスマイル)いずれ損をする人達が出てくる

 **最初は単純にOP買いで入っても ”ブーム” のお陰でそこそこ儲かったりするが、段々儲けるのは難しくなる。例えば今の相場が@103.101か月後の@104円のコール(買う権利)が@0.50銭だとすると、1か月後に@104.50を超えて初めて収益を生む。それ程簡単ではない。

 そうするとみんな考え始める:「もっと確実に儲かる方法はないのか?」

 そこで思いつくのがOP売り」だ。通常は「権利」を買ってOP料を "払う" が逆に "貰う" 方に廻る「お金」を先に受け取れるので儲かった気になるし、e.g. @0.50銭×$1百万=+$5,000(52万円受取)、実際上手くいく時もある。ポイントはOPには「期限」があること。期限に相場が「ストライクプライス」(設定価格、以後SP)+OP料を超えなければ収益が出る「時間価値」を「お金」に変えようというわけだ。

 実はこの手法、銀行などの「キャリー取引」11.13.相場の暴落を阻む「キャリー取引」ご参照)に考え方が似ているどちらも鍵は①相場が大きく動かない、あるいは②一方方向に動くこと

 「キャリー取引」では百億、千億円単位でファンディング(資金調達)が必要なので個人には無理だが、「OP売り」は可能だ。本来数ヶ月後の相場を当てるのはプロの仕事だが、これも ”ブーム” 当初は素人でも「みんな儲かる」相場がドンドン同じ方向に動くからだ。

 恐ろしいのはこの ”ブーム” の後「OP売り」が積上がって権利行使日に相場SPに近付くと大変だ。e.g. @104円コールOP料@0.50銭=@104.50を超えた分は全て損失「リスクは∞」***ポジションが偏っているほど「損切り」で@105.00,@106.00と値が飛び、相場の急変動を招く

 ***「ノックアウトOPなどは更に悲惨。期限内に一度でもSPを付けるとOPが ”消滅” する仕組みで、その分OP料は安く設定されている。期限内にSPを付ければOP売り手の勝ち。値が付いた、付かないを巡って売り手と買い手が「防戦買」「防戦売」で火花を散らすこともあった。

 FXではOPを巡る相場の急変動を何度も経験した学習効果から、今では極端なポジションの偏りを避けている。多くのトレーダーが市場から退場を余儀なくされ "成熟" した儲け難いマーケットに。その点RHが席巻する「株OP "成熟" にはまだ時間がかかりそうで、今後も相場を振り回しそう。

 筆者が興味を持っているのは「金利OP」にどれだけRHが参戦しているか。例えば米国債10年は何度も@1.0%を試したがその都度跳ね返されている。「キャリー取引」が主体とは思うが、ひょっとして「SP@1.0%のOP売り」で跳ね返されているのでは...? もしそういう ”偏り” が積上がっているなら金利が一気に@1.2%、@1.3%と跳ね上がる可能性も高まる。

 日本ではまだ個人に「株OP( ”かぶオプ” というらしい)は普及していないようだが、今のように相場が上昇基調なら米国の後を追う可能性もある。単純な売買では段々儲からなくなるのは相場の常。逆に言えば「株OP」はまさに「戦国時代」であり「下克上」も起きやすい

 まあ「預金」も結構なリスクなわけで「株」「外貨」の方が「危ない」わけじゃない市場で値が付いているかどうかの違いだけだ。個人がOPまで手掛ける「国民総トレーダー時代」「リスク」には心して臨みたい。

インフレリスク+円安リスクマトリックス


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?