アジア通貨もおかしい。ー 急激な「円安」が導く「インフレの輸入」。
年初来▼18%近く安くなっている「円」がFXでは2022年の主役なのは間違いないが、ここにきて他のアジア諸国に波及してきた。輸出条件を有利にする「通貨安」は、通常「近隣窮乏化政策」などと言われ批判の対象となるが、世界的「インフレ」が激しくなって「通貨高競争」に転じている。
例えばフィリピン。5月に続いて+0.25%「利上げ」を決定し、政策金利は@2.50%に。「通貨安」から来る「輸入インフレ」が問題化し、対ドルレートは「コロナ前」を突破。一気に危機感が高まっている。
やはり「円安」に引っ張られているのだろう。まだまだ腐ってもGDP世界3位の経済大国である。対日貿易の多いタイにも同様の傾向が見られる。
ここに来て "異変" が起きているのがウォン。防衛ラインと思われていた@1.2000を飛び越し@1.3000台に突入。KOSPI指数も独歩安状態だ。
2019.12.10の 韓国「外貨準備高」の怪(続編)- (仮説)ウォン安になるほどKOSPI高?|損切丸|note を覚えている読者がいるかもしれないが、「外貨準備」の ”会計操作” についてある「仮説」を立てた ↓ :
当時は「輸出規制」だの ”GSOMIA” だの、日韓が紛争状態だった時期。ウォンが売られ、為替レートが@1.2000を突破して危機感が高まった時に、不自然にウォンもKOSPIも急回復した。そこで立てた「仮説」である。
実はこれ、当てずっぽうでもなく、1つ根拠がある ↓ :
↑ は国家破綻でIMFの救済を受けた時のエピソードだが、いわば ”会計操作” については前科がある。折しも大統領が替わって前政権の不正捜査が始まっているというし、ひょとしたら…。仮にそうだとすると:
①株を売ってドル買戻し (→ 銀行にドル貸付 )→ KOSPI、ウォン急落
政権が変わる度に "ちゃぶ台返し" はいつものことだが、まあ、無い話ではない。表へ出すかどうかは政治的判断になる。
そして円に次いで「通貨安」が際立つのがインド・ルピー。これは彼の専制国家から「安い原油」を大量に購入した、一種の副作用でもある。 続・「ルーブル」の ”リアル” 。ー 人民元安、インドルピー安による「隠れルーブル買介入」。|損切丸|note の結果なのだが、これだけ「通貨安」になると全体として本当にメリットがあったのか、疑問も湧く。「誰も儲からない様に調整する」マーケットの機能が働いている。
この異例の「通貨高競争」をリードしたのは紛れもなくECBだ。やはり戦争地に近く、エネルギー依存の高いヨーロッパの「インフレ」ダメージは深刻。急速な「利上げ」転換でドルに続いて「インフレの輸出」を図っているが、これを*真っ向から「輸入」しているのが日本という構図だ。
現状は日本から溢れた「インフレ」がアジア諸国に向かっていると考えられるが、タイバーツ暴落から始まった1997年の「アジア通貨危機」再来は避けたいはず。中国寄りのスリランカのデフォルトは一種の ”スケープゴート” で、このタイミングでパウエル議長の議会証言が出て米国債金利が低下に転じるのは何とも絶妙。「コロナ危機」からの脱出で綱渡りが続いている。
対中国で立ち位置が微妙な韓国は、今も続く日米との政治折衝で今後の行く末が見えてきそう。だが前政権のやってきたことがやってきたことだけに、信頼を回復するの相当大変。ウォン安+KOSPI安は一種の警鐘かもしれない。ただ日米共にそれ程余力がないので、交渉はお互いのメリット・デメリットを睨んで是々非々で進んでいきそうだ。
金利市場の大復活で書く事が増えて「損切丸」には嬉しい限りだが、これだけ画期的な「過剰流動性」からの脱却は前例がない。モグラ叩きゲームのようにあちこちで変化が連鎖し「お金」が市場間を凄い勢いで動く。株もFXも金利もまだまだ動くだろうから、 ”マーケット迷子” にならないようきちんと付いていきたい。
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