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” ♪ もうどうにもとまらない ♪ ”。

 この山本リンダさんのフレーズを知っているあなたは間違いなく昭和生まれ(笑)。米国債の売りが ” ♪ もうどうにもとまらない ♪ ”節目とみられた10年@1.70%、30年@2.50%をあっさり突破してしまった。東京から欧州時間にかけて売られたところを見ると、2月3,4週の▼3.6兆円売りのように邦銀からドル債の処分売りがまた出ているのかもしれない。

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対外対内証券投資2.14~2.27

 「パウエル議長がやらないなら俺たちが "利上げ" してやる」

 アメリカの市場というのは押し並べて ”主体性” に富んでいるが、 ”総本山” ともいうべき「米国債市場」は格別。かつてFRBは「市場との対話」の中で利上げ・利下げを決めてきた局面も多く、その声は無視できない。

 今米国債のトレーダー達が感じているのは、「市場の声」を無視して、いたずらに「ゼロ金利」を継続しようとしているFRBであり、それなら「インフレにしてやろうじゃないか」ということになる。財務当局が「インフレ」を目指しているのは周知の事実であり、この「ゼロ金利継続」はいわば米国長期債売りの ”免罪符” 。こうなるととことんFRBを試しに来るだろう。

 「低金利」に異様に固執している欧州もさすがに米国債に引き摺られ、今も3/18の欧州国債市場をウォッチしているが、見る見る間に金利が上昇フランス10年国債は瞬く間に再度@0.0%に接近している。

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 もともとVAT(日本で言う消費税)が高く「インフレ体質」のヨーロッパも一旦火がつくと止めにくいところがある。おまけに*「低金利」→「通貨安」を志向しているなら尚更 ”危ない”

 これだけ米国債金利が上昇すれば「ドル高」になりそうなものだが、今日(3/18)のユーロドルは上昇=ユーロ高・ドル安「為替は金利に連動する」などと解説するエコノミストストラテジストが多いようだがこれは正確でない。金利の世界で言われているのは「イールドカーブがスティープニングする通貨は売り」。筆者が現役の頃は「米国債2年-30年の金利差が開くときはドル売り」が常識だった。つまり「インフレになる通貨は売り」ということ。為替は "名目金利" に単純に連動しているわけではない

 そして ”トリ” に控えるのが日銀と日本国債=JGB。3/18~19の政策決定会合で「金融政策総点検」が行われるが、どうやら①10年国債の変動幅をゼロ±0.20%から±0.25%に拡大②ETFの6兆円買いを撤廃(12兆円の上限は維持)となりそう。本日日経平均が@30,000円を回復したのも支援材料だ。

 しかし米国債市場の喧噪をよそに、JGBは ”羊” のようにおとなしい日本特有の ”お上” への忖度もあるだろうが、資金フローで考えると今は邦銀勢による「米国債売り」→「円資金回帰」の動き ↓ がJGBを支えている

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 なので、JGBは米国債の "大波" から大分遅れて動き出すだろう。例えば10年米国債@2.0%を突破して邦銀が「ヘッジ付け外債」を再開する時JGB市場から「お金」が流失し本格的な金利上昇が始まるはずだ ↓ 

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 そして本丸、「金利上昇」は株等他の資産市場にどう影響してくるのか。今のところ「国債が最も危険」と見做すファンドやトレーダーが多数派であり、株等を引き摺り下ろす程のインパクトはない。**まだ「国債売り+株買い」が主流だろう。

 **国債への「お金」の移動を端的に表しそうなのが「ビットコイン(BTC)の下落」ではないか「金利」が付かないだけに、ある程度の金利になったら国債に乗り換える投資家が出てきそうだ。

 「インフレ」に関しては米国債株式市場だけではなく、実体経済で起きている事実も見逃せない自動車産業の半導体不足は深刻化しているが、今度は「石油繊維製品の品不足」が原因でトヨタ、ホンダが北中米4工場を停止するという。エアバッグのナイロン繊維の供給も不足しているらしい。

 これらは「コロナ前」なら中国を含む他のサプライヤーから調達可能だったはずで、「コロナ後」に起きた供給力の大幅な削減の影響と考えられる。経済学で言う「ボトルネック」現象だが、需要に供給が追いつかなければ価格は上昇せざるを得ず「インフレ」の芽になりやすい米中を巡る「サプライチェーンの再構築」の影響も無視できないだろう。

 金利が上がらない日本では感じにくいかもしれないが、***アメリカが「インフレ」になるのに日本やヨーロッパ、或いは中国も「インフレ」にならないはずはない。徐々に影響が露わになるはず。金利為替株式等マーケットだけではなく、生活の現場でも価格の動きを注視したい。

 ***トルコ中銀が予想(+1%)を上回る17%→19%(+2%)の利上げを敢行。やはり「通貨安」から来る「インフレ」が相当厄介なのだろう。アメリカの金利が上がる時はいつも弱小国にしわ寄せが行くメキシコ通貨危機(1994年)アジア通貨危機(1997年)ともに米国の金融引締め局面で起きている。この辺りにも目配せしておきたい。

  ” ♪ もうどうにもとまらない ♪ ”と熱くなっているうちに本当に ”狼” がやってきて ” ♪ こまっちゃうな~♪ ”(山本リンダ)とならぬことを祈るのみ。いつも焼け死ぬのは一般庶民。自分を守れるのは自分だけである。

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