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もし ”ドル” や ”円” がなくなったら...

 「 "NFT" の価値って、どうやって決まるの?」

 「例えば ”ドル” や ”円” がないとして...」

  "NFT" (Non-Fungible Token、非代替性トークン)= ブロックチェーンと呼ばれるデジタル台帳上のデータの単位で他のトークンで代替することはできない、ユニークな(唯一の)デジタルアイテム。例えばアート、オーディオ、ビデオ等のクリエイティブな作品をデジタルファイルで表す "NFT" デジタルファイル自体は無限に複製可能であるが、それ自体は基盤となるブロックチェーン上で追跡され、購入者にそれを保有する権利の証明を提供する。イーサリアムビットコインFlowなどの一般的なブロックチェーンが、それぞれ独自のトークン規格で "NFT" の仕様を定義している。

 たまたま娘の「情報」の授業で出て来た "NFT"  ↑ で、ちょっとした「頭の体操」になった。筆者がざっくりと理解しているのは、デジタルアートや美術品の一種の「電子証明書」「暗号資産」同様にブロックチェーンの技術を用いて「唯一性」を規格しており、確か「NFT」第一号はイーサリアムベースだったと記憶している。

 この分野に明るくない「損切丸」としては認識が出遅れている訳だが、世の中では結構な値段で取引が広がっている。オークションで有名なサザビーズでも扱い高が5%を超えているというから、既になかなかのものだ。

 ただこの "NFT" の話、実は今後の「大変化」の可能性も示唆している。

 例えば美術や音楽の作品価値を計る時、今はどうしても ”円” や ”ドル” が基準となる。だがこれは ”絶対価値” ではない1929年の「世界恐慌」で機能しなくなるまでは「金」(Gold)が価値基準だった。その後は「変動相場制」を経て、現在は実質「ドル本位制」に移行しているが、その ”ドル” を筆頭に ”円”  "ユーロ" 等の「法定通貨」の価値が揺らいでいる

 そう、現在の「インフレ」がまさにそれ

 「父が娘に語る経済の話」(ダイヤモンド社、ヤニス・バルファスキ=著、関美和=訳)の中の「通貨」の例え話が機知に富んでいるので、ご興味のある方は「ロボットは商品を買ってくれない」↓ (2019.11.27)に目を通して見て欲しい。

 捕虜が収監されている牢獄で「タバコ」が「通貨」の役割を果たすが、それはみんなが「タバコ」を欲しがるから。つまり「希少性」があるものが「通貨」=価値基準となる。かつて「金」がそうであったように。

 この例えを頭に入れつつ現在の状況を考え直してみよう。みんな「お金」が欲しいのは確かだが、「希少性」は保たれているだろうか。世界中で3京円を超える「お金」が「借金」してばらまかれ、しかも国によっては「マイナス金利」政策を実施国債の「実質金利」は殆ど「マイナス金利」だ。

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 「お金」を保っていると「利息」=「罰金」を取られる??

 これは「法定通貨」を発行する側の「都合」でしかなく、もはや「価値基準」として維持するのはかなり難しくなっているのではないか

 反対に、ビットコイン(BTC)を筆頭にここ数年 ”暴騰” している "暗号資産" はどうか。確かに発行上限が決まっているので「希少性」は高い。2013年の「キプロス危機」「お金」の逃げ道として利用され、当時20ドルだったBTCは10倍の200ドルに暴騰5年後の2018年は更に100倍の@20,000ドル ↓ 参照)、そして今や@60,000ドルを超えている

 BTCの「適正価格」が200ドルなのか60,000ドルなのか、判断できる投資家はいない。だが価値の毀損している「法定通貨」からの逃避先になっているのは間違いなく、これは株や木材、原油・天然ガスも同様「希少性」の高い芸術品を扱う "NFT" が高値で取引されるのも "自然" な成行だ。

 「価値基準」は ”ドル” から "暗号資産"  "NFT" 等に移行するのか?

 ポイントは「流通量」 "暗号資産" 単体で「法定通貨」を上回るのはまず無理だが、原油や天然ガス、 "NFT" 等がBTCやイーサリアムで取引される事例が増えるかもしれない。将来的にアマゾン社がネットショッピングの決済にBTCや "NFT" を介在させないという保証もない ↓ ご参照)。

 「BTCやイーサリアムで "NFT" の価値を計る日が来るかもしれない」

 娘には何となくこういう言い方をしたが、果たしてどこまで納得してくれたか(苦笑)。*それほど今回の「インフレ」=「法定通貨」の価値崩壊は深刻であり、"生き抜くためには克服が必要" という意味では「地球温暖化」と同じぐらいの破壊力を秘めている「大変な時代」を彼女達は迎える。

 FRB「利上げ」をするかどうか苦悩しているのは、単に「インフレ」を押さえ込むかどうか、などという生易しいものではない「ドル」の価値を維持するためには少なくとも「実質金利」をゼロにするための「大幅な利上げ」が必要だが、それは世界的財政破綻(≓ 実質「国民」破綻)を招くリスクがある。逆に国家債務圧縮の為に「インフレ」=「通貨価値毀損」を放置すれば「ドル」の「通貨覇権」を失う。まさに究極の二択。


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