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見切り発車の株式市場 vs 冷静なFX vs 「生き返る」金利市場。

 米大統領選投票日当時(11/3)、米株式市場は「見切り発車」よろしく買われた。もうどちらが当選しても関係なかろう。 ”選挙が終わったら買い” と事前に決めていたような動きだ。

主要株価 03 Nov 20

 そもそも現在の株式市場はHFT(High Frequency Trading、高頻度取引)に代表される「機会取引」に支配されており、値動きがいいのが ”特徴” 実需を何百倍にも増幅( ”レバレッジ” )させるこのシステムが基本「買いバイアス」に傾いていることは何度か説明してきた。100万円の買いを常時1億とか10億の買いに ”レバレッジ” するので上昇相場は速く大幅になりがちだ。今回の動きもこの特徴を最大限生かしたものと言って良い。

 トランプ政権になってからの4年間、市場はこの「機会取引」に支配されてきたと言っても過言ではない。この ”レバレッジ” を最大限利用する上で必要だったのが「過剰流動性」だ。大統領本人か側近かは定かではないが、この市場の "特徴" を熟知するスタッフが政権の中枢におり、相場を操ってきたと考えて良いだろう。だからこそのFRBへの強烈な利下げ圧力であり、「過剰流動性」のコアである日本の安倍首相への歓待だったわけだ。

 しかしここへ来て風向きが変わりつつある。きっかけは「コロナ危機」日米欧による500兆円を超える膨大な額の財政支出より一気に「流動性」を吐き出し、撃つ「弾」を使い果たしてしまった。既に*日本が「打ち方終わり」になっているのはこの「損切丸」で伝えてきた通りだ。

 こちら ↓ は最新の「日銀バランスシート」@10/30/2020。依然「政府預金」=短期国債発行によるマーケットからの資金調達=▼56兆円の「資金不足」が続いている。「特別貸出」が107兆円台と未だに増加が続いており、 ”財務省による日銀資金繰り支援” やむなし、との判断だろう。

日銀バランスシート @30 Oct 2020

 この変調を如実に伝えているのが「金利市場」。米国債市場を見るとベンチマークとなる10年国債金利が@0.90%に達し既存レンジを抜けてきている3/18の「換金売りによる暴落」以外には見られなかった現象だ。

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 世界に確定利回り(Fixed Income)を欲しがる投資家はゴマンとおり、これまでも金利上昇は ”実需の買い” に阻まれてきた。だが今回買いの動きは鈍い。やはり「過剰流動性」が通常に戻りつつあるのは間違いないだろう。

 昨日(11/2)金融緩和(@0.25%→@0.10%、国債買取1,000億豪ドル(約7,400億円))を決定したオーストラリアや追加緩和を模索する欧州はやや違う動きを示している。オーストラリア10年国債は一時@0.75%まで低下した後@0.86%に反騰。欧州では「資金繰り支援」を受ける、スペイン、イタリア、ギリシャ等いわゆる「高金利通貨国」「お金」が流れている様が見て取れ、いずれも「過剰流動性」の状況にはない

実質金利G11(after CDS)@03 Nov 20

 もう1つ興味深いのが極めて冷静なFX、為替市場だ。ドル金利の上昇と米株の反発を受けてドル円を買ってくるかと思ったが、意外や意外、**むしろ基調は売り(円高)のようだ。同じ「機会取引」が浸透している市場だが、やはりこちらは長年生き延びてきた猛者揃い。「年季が違う」。もはやニュースに飛びついて ”ゼロヨン方式” ”反射神経” だけで簡単に儲けることはできない。「金利市場」同様、かなり「現実」を映し出している

 **@11/4午前の東京市場で「トランプ優勢」に転じた後の市場の動きを見ていると、「バイデン大統領」=「ドル売り」「米国債売り」「米株売り」、いわゆるドルのバラマキによる「トリプル安」を見込んでいたようだ。マーケットでは意外に(笑)「トランプ大統領」は人気ということか。

 選挙結果が判明するまでにまだ時間を要するようなので、今しばらくは結果待ち。「現実」を映す「金利市場」「FX」の声を尊重している筆者としては、”見切り発車の株式市場” のラリーは短命と見ているがさてどうなるか。僅差の結果で揉めて法廷闘争で越年、なんてことになったらもう誰にも先は読めない。何せ前例がないのだから(苦笑)。

 この4年間「機会取引」+「過剰流動性」の両翼で高く舞い上がってきた米株式市場。しかし「イカロスの翼」ではないが片方の翼は「熱」=「金利上昇」によって溶けつつある。ただこれは「市場の正常化」という側面もあり、真面目に取り組む投資家にとっては朗報でもある。あとはその過程で想定される ”混乱” をどう凌ぐか。ここで生き延びた投資家、トレーダーが来たる10数年、大きな果実を得ることになるだろう。「正念場」である。

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