見出し画像

押し寄せる「利下げ」の "波" Ⅳ ー 「お金」の "日本還り" がもたらすもの

 押し寄せる「利下げ」の "波" |損切丸 (note.com)
 
続・押し寄せる「利下げ」の "波" ー だが長期国債の「需給」は...|損切丸 (note.com)
 
押し寄せる「利下げ」の "波"Ⅲ ー 「金利」の ”流れ” |損切丸 (note.com) のシリーズ

 7月米CPI(年率)+2.9% 予想 +3.1% 前月 +3.0%
 (前月比)+0.2% 予想 +0.1% 前月 ▼0.1%
 コア +3.2% 予想 +3.2% 前月 +3.3%
 (前月比)+0.2% 予想 +0.2% 前月 +0.1%

 注目の7月米CPIはほぼ市場予想通り。もっと "大波" を期待していた向きにはやや肩透かしになったが、2022年6月の+9.1%( ↑ 標題グラフ)を考えれば良くここまで抑制されてきたと言えよう。FRBが9,11,12月にそれぞれ▼0.25%ずつ「利下げ」する現状のシナリオは維持された

 ドル円の@147円台への反発を見ると、やはり@140円割れを目指すには ”借入通貨” 「円」自体の「利上げ」は不可欠。 ”黒船頼み” という訳にはいくまい首相の退陣表明で政治が流動化し、日銀にとっては "胸突き八丁" 

 米株価の動きを見てみると、もう「円安」だけで「日経平均」は買えない - 「円安」を止める "鍵" |損切丸 (note.com) 風に例えれば "もう「利下げ」だけでNYダウ・ナスダックは買えない" 。*「円キャリートレード」崩壊で日本から「過剰流動性」の支援が途絶える影響が大き過ぎる今後は徐々に米国債、特に長期債の上値が抑えられ株価の圧迫要因になる

 *ドル債で大やられした邦銀の「外債投資」も期限償還毎に金利の上昇したJGBに置き換わっていくため以前ほどの巨額は維持できなくなる。つまり米国債はあるべき「適正金利」へ収束していく。発行量やドル高相場の修正を考慮すると10年超の米国債金利は「政策金利+100BP程度」になりそう。今回の "暴落"「オルカン」や「S&P」も一時の勢いを失うだろう

 今後の予想が最も難しいのがJGB(日本国債)、特に「イールドカーブ」

 「名目金利」が低過ぎる事もあって、政策金利とのスプレッドは10年が+0.60%、30年では+1.8%程度まで開いている米国債の2ー10年スプレッドが+0.20%程度しかない事を考えれば既にかなりの「金利差」。仮に@1%まで「利上げ」したとしても30年JGBが@3%を超えるような展開は考えにくい米国債金利が低下基調を辿るなら尚更だ。むしろ10~30年と政策金利のスプレッドは縮小に向かうはず( "ベアフラットニング" と呼ぶ)

 FXや株価への影響を考えるなら、むしろ「量」の影響が大きい「ドル債投資」を通じて米国市場へ流れていた日本からの「過剰流動性」は300兆円程度 ≓ e.g., 日銀保有JGB593兆円@8/10の50%この「お金」が "帰国" するなら、単純に米国債には売り要因でJGBには買い要因NYダウ・ナスダック・S&Pと日経平均・TOPIXにも同じ理屈が成り立つ

 実際の相場が「量」の移動通りになるとは限らないが、国際的な「資金フロー」は頭に入れておいた方がいい。財務省・日銀による「ドル売り・円買い介入」もこの一部。筆者がしつこく やはり「過剰流動性」の総本山は日本 ー 「結果」を得るには一度「苦況」を乗り越えなければならない|損切丸 (note.com) と唱えるのはこれが理由だ

 20年もの間に日米の株価の差があれだけ開いたのはこの「資金フロー」に尽きる。これが今 "逆流" しようとしている。だから今回の日銀の「利上げ」は単なる「利上げ」ではない。大袈裟に言えば国際資本市場を揺るがす大事件と言っていい。先日日経平均が▼4,000円も下がって大騒ぎになったが、これは単なる序章かもしれない。まさに「取扱い注意」

 だから植田総裁が慎重に慎重を期すのは当然。かといってまごまごしていれば 「通貨危機」の "芽” |損切丸 (note.com) に転じてしまうリスクもある。「異次元緩和」「XXバズーカ」「国債無制限指値オペ」等々は後処理に困る、何とも厄介な代物なのである

 30年近く「金利」に携わった「損切丸」も、FRBが本格的「利下げ」に突入する中、同時進行で日銀が「利上げ」に着手するのは初めて見るFRBと日銀がかなり綿密に連携を取らないとかなり難しい局面だ。金融政策の王道を行くFRBはまだしも政治が絡む日銀は "Walking on the Tight Rope" (危ない綱渡り)。特に「量」の引揚げ ≓ テーパリングはマーケットにとってかなりの負荷「インフレ」動向と合わせ2025年以降も大きなテーマとなる

 ただ日本人にとって悪い事ばかりでは無い「お金」の "日本還り" は基本的に国内の「投資」「相場」にはプラス「金利のある世界」はショックがあるかもしれないが、あまり悲観的にならずじっくり見極めていきたい

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?