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続・押し寄せる「利下げ」の "波" ー だが長期国債の「需給」は...

 押し寄せる「利下げ」の "波" |損切丸 (note.com) の続編

 6月米ISM製造業総合景況指数 48.5 予想 49.1 前月 48.7
 ・仕入価格指数 52.1 前月 58.0 ー 2023年5月以来の低水準
 6月米ISM非製造業総合景況指数 48.8 予想 52.7 前月 53.8
 ・2020年4月以来の大幅悪化
 ・雇用指数は5ヶ月連続@50割れ、2021年10月以来の低水準
 6月ADP米民間雇用者数 +15万人 予想 +16.5万人 前月 +15.7万人 ← 速報値 +15.2万人
 ・転職した人の賃金 前年比+7.7%上昇、3カ月連続で伸び鈍化
 ・同じ職にとどまった人の賃金+4.9%、2021年半ば以来の小幅な伸び

 6月ドイツCPI +2.2% 予想 +2.3% 前月 +2.4%
 6月フランスCPI +2.1% 予想 +2.2% 前月 +2.3%

 パウエルFRB議長:「(アメリカの物価について)ディスインフレ = 物価上昇率が低下していく道に戻った」

 FRBの「利下げ」を後押しする経済指標が相次いでいるパウエル議長が ”ディスインフレ” に言及したのもそういう背景があるからだろう

 ISM指数は不調の製造業(  標題添付)に続いて、「インフレ」のコアである「人件費」の影響が大きいサービス業の鈍化 ↓ が決定的。奮わないADP雇用指数と整合的でもある

 これを受けて米国債市場では「利上げ」の前倒し期待から2年債が一時@4.7%を割り込むなど金利が低下ドル円も@161円台前半まで突っ込んだ。だが、双方とも引けにかけて徐々に値を戻した

 どうしてこんな動きになったのか? 理由は大きく2つ:

 1.邦銀勢の「外債投資」鈍化による「需給」の悪化

 N中金に地銀と、邦銀ではドル債投資による巨額損失が表面化。「(為替ヘッジ付)外債投資」に陰りが出るのは不可避。更に日銀・財務省による「ドル売介入」が実施されれば米国債の「需給」悪化は避けられない
 加えて日銀による「利上げ」転換で100兆円単位の「円」の "里帰り" も想定される。「過剰流動性」により押し上げられていた(金利が低下していた)欧米債券には長期債を中心に ”正常化” の修正圧力がかかる

 2.「もしトラ」リスク

 現大統領の選挙戦撤退観測が燻る中、「もしトラ」の実現可能性が高まっている「ドル高」修正の要請が高まるのは必至FRBにも「利下げ」圧力がかかる。ファンド勢の中には極端な「リフレ」政策を見越して「スティープニング」(長期金利が短期金利を上回る現象)を構築する所が出てきた
 一方日欧の「デジタル赤字」に見られるように、アメリカの国益を考えると「ドル高」修正を急ぐ必要は無いFRBとしてはどうせ "圧力" が高まるなら大統領選挙後まで ”札” を取っておこうと考えるのが自然。だから「12月利下げ開始」が市場予想の中心なのも頷ける

 複雑な要素が絡み合っているマーケットだが、「金利」@5%の威力|損切丸 (note.com) で「利下げ」が現実味を帯びてきているのは間違いなく、TOPIXが1989年12月18日に付けた史上最高値@2,888.40を上回る原動力になったのは間違いない

 一方米国債と共に「過剰流動性」の多大な恩恵を受けてきた米株式市場は一筋縄ではいかない巨額の資金が「ドル」→「円」に戻る(為替直先経由なので直接ドル円の下押し圧力にはならない)のは懸念材料ではある。ただ「新NISA」で人気の「オルカン」「S&P」等、邦銀の「外債投資」減少を補うフローも予見されるため、そこはタイミングと「需給」の問題

 ドイツ、フランスのCPI低下傾向がはっきりして来て「利下げ」したくて堪らないECBもFRB待ち本音では日銀同様かなりジリジリしている事だろう。いずれにしろ ”バイデンフレーション” の衝撃。|損切丸 (note.com) は米経済政策の大失態でありはた迷惑なだけ3回連続+0.75%なんて "世紀の利上げ” も弥縫策に過ぎない。「コロナ危機」は余計だったが、これも「インフレ」時代転換への歴史の必然だったのかもしれない

 波乱の2024年相場も後半戦に突入。個人的には「安過ぎる円」の修正を予測しているが「キャリートレード」の誘惑も強くまだ道筋が見えてこない。肝心なのは「お金」がどこからどこへ動くのか。筆者が「過剰流動性」のサインと見做しているビットコインが@58,000ドル台まで急落しているのも気になる。一体何が起るやら。まだまだ楽しめそうな(?)相場である

 

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