こんなの間違っている

続々・「こんなのおかしい!!」の罠 ー 人工知能(AI)の限界。

 さて先週末の地合を引き継いで再度株安・金利低下で始まった今週の相場。金利市場では、やはり Commonwelth 諸国=アメリカ、イギリス、オーストラリアが最も動いており、金利市場としてはなかなかの変動だ。

実質金利G8(after CDS)@10Feb20

 しかし今回の「新型コロナウイルス」相場、過去の「米中貿易戦争」や「トランプ相場」とどうも趣が違う。何が違うのか?:

 1.「米中貿易戦争」

 2018年、2019年の相場を揺るがした「米中関税合戦」。しかしよくよく考えてみれば、これはトランプ大統領が人為的に作り出した相場で、落しどころは見えていた米中の「部分合意」を受けて、結局米国株価は史上最高値をどんどん更新していった。

 2.「イラン空爆」

 2020年初、突然起きた「イラン空爆」「第3次世界大戦か」とまで一部で懸念されたが、これとて「トランプ相場」の一部、つまり人為的演出。イラン側にも「あ・うん」的な事情もあり、戦争にまでは至らなかったことは後々透けて見えた。

 3.「新型コロナウイルス」

 「生物兵器」とまではいかなくても、研究所からのウイルス漏れ事故や検体動物が生鮮市場に流れて売られていた可能性も指摘されており、封じ込めに失敗したことも含めると、ある意味人為的ではある。しかし ↑ 1、2の例と決定的に違うのは、終息の目処が「人為的」には立てにくいことだ。

 それではこの3つ、人工知能=AIにとってはどうか。*株式市場に関して1,2で強く学習されたことは、売られた場面で買えば儲かると言うこと。ならば今回も同じプログラムの作動は考えられるが、違い=終息の目処が「人為的」には立てにくいこと、まで精緻にプログラムすることは可能なのか。おそらくそれは膨大な不確定変数が絡むので、そんな難しいプログラムを作り込むより人間の脳で考える方が余程早い

 前に大手の投資銀行がこぞって「パンデミックで売られた株は買い」と唱えたことにも触れたが、彼らのAIプログラムがそういう指示を出していたのなら、株を売りたい「上客」に対しても「慌てなくても戻って来ますよ」とアドバイスすることになる。実際株式相場もそのように動いた。

 しかし、である。がらがらの上海や北京の繁華街や、「シンガポール帰りのイギリス人がフランスのスキー場で発症」などのニュースを見るにつけ、今回の相場を2018~1029年の「学習効果」に当てはめるのはやはり無理がある。金利市場の方がその事をきちんと認識している。

 生来疑い深い「損切丸」、どうしても今回の株の戻し相場は「欺し」に見えて仕方がない。いくら中国のダメージが米国の利益につながるといっても、パンデミック進行中に米国株の最高値更新はいくらなんでもやり過ぎ。米国株についていっている日経平均等の買いにはなお無理がある。ただAIやプログラムに「違い」や「やり過ぎ」まで管理する能力は今のところなさそうなので、ある意味しょうがないのかもしれない。

 しかしマーケットというものは非情で残酷な面もあり、儲けるためならどんなものも利用する。例えば過去にヘッジファンドがその神通力を失う過程では、「ソロスファンドが買ってますよ」などと客や知り合いには吹聴しておいて自分は売って儲けた、なんて話がごろごろあった。今回も「売られたら株買い」のAIプログラムを「利用」する可能性は十分にある。特に株を売りたい向きには好都合だろう。

 最後の最後、相場がどうなるかは「神のみぞ知る」。特に見通しの立たない今回はそうだ。そして「嫌な臭い」も立ちこめている - 最後に「餌食」になるのはいったい誰なのか

 人間の「脳」は人工知能より遙かに複雑で、その最たるものが「違和感」「第六感」だろうが、何がそれを生み出しているのかがはっきりするまで今回は手が出ない。何のタイミングで「神の手」が相場をあるべき価格に押し戻すのか、正直ちょっと怖い

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