見出し画像

「高金利時代」再び? - 「インフレ」>「景気減速」の金融政策

 1Q米GDP(年率)+1.6% 予想 +2.5% 前期 +3.4%
 コアPCE価格指数 +3.7% 予想 +3.4% 前期 +2.0%
 *住宅とエネルギーを除くサービス分野の価格指数 +5.1%

 PMIの減速で 「利下げ」の ”芽” vs しつこい「円安」|損切丸 (note.com) と期待した矢先、あっさり "芽" を摘まれたやっぱりアメリカで燻る「インフレ」の ”種火” Ⅱ。|損切丸 (note.com) 

 これを受けて米国債のフラットニング(平坦化)が進み、年内の「利下げ」はほぼ消滅。それどころか「再利上げ」まで心配になって来た

 景気が減速する中での物価上昇はまさに「スタグフレーション」の様相を呈してきたが、金融政策の教科書的には「インフレ」>「景気減速」でFRBは「利上げ」を優先せざるを得ない。怪我に例えれば骨折して患部が熱を持っているのに「利下げ」は動けるように "強壮剤" を飲ませるようなもの。治らないまま運動を再開すれば怪我は悪化する一方。まずは患部を冷やさなければならない ≓「利上げ」≓「利下げ」中止

 これを嫌がったのが動きたくてウズウズしてる株式市場。メタ社株の急落で どうした?「マグニフィセント7」|損切丸 (note.com) が続くが、やはり値が上がり過ぎていたのだろう。やたらと "強壮剤" ≓「利下げ」を欲しがる患者に間違った薬を与えるのは危険だ

 さて一方の日本。こちらはまた事前リークかと思わせる「国債買取額減額を検討」という記事が出ていたが、蓋を開けてみれば政策変更無し。 ”検討” なので嘘ではないが政府・日銀の苦しい胸の内を現しているかのよう。イエレン財務長官からは「為替介入は ”まれ” であるべき」と釘を刺され軽々と動けない中、お腹を空かせたマーケットが介入を待っている現状では効果も期待できない。ここはポジションの積み上がりを待つしかなかろう

 ただJGB(日本国債)市場を見ると5年超の中長期債を中心に金利水準は切り上がったまま。現状の「国債買取オペ」では年70兆円程の買入≓年間償還額で市場への流動性インパクトはほぼゼロだが、昨年10月の90兆円からは▼20兆円減らしている。実務的に「下限金額」まで下げれば年50兆円程度まで減らせる≓▼20兆円のQT(量的引締)が更に進む

 コアCPIの見通しも引き上げており「利上げ」シフトは間違いない

 「バズーカ」に押し出されて海外に向かった「過剰流動性」が400~500兆円という話を何度もしてきたが、その "恩恵" に預かってきたのが米国債であり「マグニフィセント7」にビットコイン(BTC)、WTI(NY原油先物)や金(Gold)もそう「日経平均」が政策変更なし発表後に戻したのも "恩恵" のおかげ。そしてその最大の受益者は「ドル円」という事になる

  ”どうした?「ドル円」” という日は(いつ)やって来るのか

 マーケット変数の中で最も把握が難しいのが「流動性」。いわゆる ”弾切れ” がいつ、どこで起きるか市場変動を加味したVaR(Value at Risk)モデルでもクラッシュ時の「流動性」は算定不能。だから 相場が壊れる時は突前訪れる|損切丸 (note.com) これを唯一示せるのが「金利」になる。「資金繰り」なら短期金利のTONAR(無担保コールO/N金利)やFFレート、市場全体で "危険サイン" を発するのが長期金利に及ぶ「イールドカーブ」。特に「スティープニング」(傾斜化)が危ない

 「スティープニング」≓「スタグフレーション」

 短期金利に比して長期金利が大きく上昇する時=「スティープニング」は先行き「お金」が足りなくなる事を示唆し、株や不動産など様々な資産が売られる予兆となる。一概に「金利差」と言われるが、長期金利が急上昇する時に当該通貨は売られる「ドル円」も例外ではない

 「高金利時代」再び?

 今の 続・想像以上にしつこい「インフレ」|損切丸 (note.com) を見ていると、オールドタイマーの筆者は1980年代のアメリカを想起する。「スタグフレーション」的状況が続き、「利上げ」期待もないのに長短の金利差がいつも+2%以上乖離していた。だからドル金利担当者はいつも「長期運用+短期調達」で利益を上げ、市場部門の稼ぎ頭だった

 これを現状に準えるとFF@5%に対し10年米国債が@7%になる事を意味する。「金利」もこういう上がり方をするとドルは「買い」どころか「売り」に転じる保有している米国債を「損切り」しなければいけなくなるからだ

 世界中に米国債を保有している投資家がいるが「スタグフレーション」「スティープニング」が加速すれば「ドル高」を利用して「利食い」(場合によっては「損切り」)に出る。だから「金利差でドル買い」は正しい表現ではない。あくまで経済が "平常運転" である事が前提

 クラッシュを何度も潜ってきた「損切丸」だが、最後は「金利」が ”とどめ” を刺す ー 「インフレ」と「中国」の綱引き。|損切丸 (note.com) のを何度も見てきた。もしマーケットが「高金利時代」に戻ろうとしているのなら壮大なレジ-ムチェンジが起きる。そこで "鍵" を握るのが400~500兆円もの「過剰流動性」の根っこである日銀の金融政策

 とはいえ目先「ドル円」の「キャリートレード」は続くのだろうなぁ。「金利」で散々「キャリートレード」を手掛けてきた筆者が言うのも何だが、その誘惑は ”甘い罠” 。それに引っ掛かって潰れたのがシリコンバレー銀行でありシグニチャーバンク"牙" を剥いた「金利」は本当に怖ろしい。杞憂に終わる事を願うが暫くは米国債とJGBから目が離せない

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?