「インフレ」転換点? ー 米フィラデルフィア連銀・製造業景況指数をきっかけに急伸した米国債。
7/21 米フィラデルフィア連銀・製造業景況指数:
6月 7月 (市場予想)
総合 ▲3.3 ▲12.3 0.0
新規受注 ▲12.4 ▲24.8
出荷 10.8 14.8
受注残 ▲7.0 ▲10.4
納期 9.9 ▲10.2
在庫 ▲2.2 ▲9.3
支払価格 64.5 52.2
受取価格 49.2 30.3
雇用 28.1 19.4
6カ月見通し ▲6.8 ▲18.6
ひょっとしたら今の「インフレ相場」の転換点になるかもしれない。
7月米フィラデルフィア連銀・製造業景況指数が予想を大きく下回った。内訳を精査しても受注、価格、雇用ともに弱く、需要減速を強く想起させる。非農業部門雇用者数(NFP、Non-Firm Payrolls)やCPIに比べると地味な指標だが、NY FED 指数やミシガン大学消費者期待指数と共に先行指標としての重要性が高く、しばしば米市場を動かす起点となる。
時を同じくして米PMI(総合購買担当者指数)、ユーロ圏PMIがいずれも景気の節目とされる50を下回り、製造業の活動低下を示した。50割れはアメリカが「コロナ暴落」(2020年3月)直後の2020年5月以来、ユーロ圏は2021年2月以来。ここまでは住宅市場の減速以外に裏付けの薄かったウォール街の ”リセッション運動” も面目躍如か(苦笑)。
7月米PMI 47.5 予想 52 前月 52.3
7月ユーロ圏PMI 49.4 予想 51 前月 52
一昨日(7/21)から昨日のアジア市場にかけて米国債は一気に買われ、10年は@2.81%まで低下。米国市場で更に@2.75%まで買い進まれている。
”目論見通り” 、株価の底上げには成功し、NYダウは2020年終値を回復し、ナスダックもあと一歩まで迫ったが、さすがに ”景気減速" が気になったか。業績悪化も伝えられIT関連を中心に米株式市場は4日振りに反落。FXではドル売りが出て、ドル円は一時@135円50銭程度まで下落した。
ここで日本の動きを「対外・対内証券投資」で確認してみよう。最新の7/10~16の週で海外株の買い越し(+3,200億円)は続いている。
一方対称的なのが海外債、特に中長期債。これで8週連続の大幅売越し。こちらは邦銀、生保による「ヘッジ付き円投・外債」が主流だが、「利上げ」局面に加え、為替直先(FX FWD)を使った「円」での利鞘が縮小。2021年以降大きな流れは変っておらず、おそらくプラス金利の10年超JGBに「お金」を振り替えている。
ちなみに海外株の買いは個人の投信等が主役で「ドル円買い(円売り)」に直結するのに対し、米中長期債の売りは「ドル円売り」への影響はゼロ。 買い向かう「日本人」の「円安デモクラシー」 Ⅱ。ー 「円安は投機」の嘘。|損切丸|note は続いているようだ。
一方海外勢のJGB買い戻しも続いている(7月2週も+1.7兆円)。こちらも先物やレポを駆使しており「ドル円」には中立。
さて "外" に目を向けると欧米共に国債の怒濤の買い戻しが続いている。長短金利差が大きいだけに金利差による収入は大きく、「キャリー取引」が復活すると大きな揺り戻しになる。原油価格の下落も支援材料だろう。
ここからしばらくは ”リセッション” の真偽についての確認作業になる。この雰囲気のまま薄商いの8月になだれ込んでNFPやCPIが少しでも減少しようものなら、一気に急伸もある。しばらくは神経質な動きが続くだろう。
ただ、大事なのは「先を読む目」。ー もっと大事なのが「一歩踏み出すこと」。|損切丸|note 。CPIが+5%程度まで低下するのは想定内で問題はその先。商品、エネルギー価格等「コストプッシュ」要因の剥落の後、「人出不足」による「コアインフレ」がどう動くか。
+3%程度の利上げで ”ディープ・リセッション” (深刻な景気後退)にはなるまい。その点、現状の "逆イールド" が示唆するような「利下げ」局面入りはないと筆者は見ている。一度@3.0~3.5%程度で止まった「利上げ」は再度@4.0~4.5%に向けて再開する展開を想定。
それでも一時「利上げ」が止まれば、昨日(7/22)のように株もFXも原油も暗号資産も相当ドタバタ動くだろう。もうこのボラティリティー(相場変動)はしょうがない。 "軸" になるシナリオに微修正をかけながら、今どこにいるのか判らなくなる「相場迷子」にならないことが大事。相場の雰囲気に飲まれて「高値買い、底値売り」に陥るのは避けたい。
1つ大きな変化を感じるのは「戦争」疲れが世界中に広がっていること。これ以上の継続で「利益」が得られる国はどこにもない。もし今「戦争」が終わったら...。 ー 最大の ”楽観シナリオ” に備える。|損切丸|note となれば、商品、エネルギー価格等「コストプッシュ」要因の剥落は前倒しになる。ひょっとすると今の相場の裏側ではそういう思惑(情報?)が錯綜しているのかもしれない。
とにかく2022年は油断禁物。あと半年、心してかかりたい。
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