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やっぱり "不気味" な中国国債。

 ただただ "不気味" な中国国債の金利低下。(5/12稿 ↓ )の続編。

 欧米や他の国債市場の金利上昇基調を無視するように、じわじわと低下する中国国債金利 ↓ 。公表データが正しければ、中国景気は急回復し貸出も伸びているのだから理屈に合わない動きだ。

中国10年国債金利(6M)

 人民元の金融に関してはニュースソースが乏しく判断材料に困るのだが、金利が低下しているのは事実。そこには明確な理由が存在するはずなので、できるだけ ”状況証拠” を探ってみよう。

 1.「富裕層」への締め付け

 4月に中国当局が電子商取引大手アリババグループに対し、独占禁止法違反で約182億元(約3,050億円)に上る過去最大の罰金を科したのが典型。本来中国経済に貢献する優良企業を締め付けるのは ”国富” の観点からは違和感がある。実際、アリババの株価は下落基調に転じている。

アリババ株価(1年)

 おそらく1つは将来 ”政敵” になり得る種を潰しておこうという政治的意図。そしてもう1つ考えられるのが「富裕層」の懐から「お金」を抜いてしまおうということ。中国の「富裕層」というのは保有資産の額が日本とは桁2つぐらい違うらしいので、創業者のジャック・マー氏にとって▼3,000億円など痛く痒くもないCPC(Communist Party of China)への ”朝貢金” の意味合いが濃いのだろう。ただ景気には明確にマイナスだ。

 2.中国版「バッドバンク」( ↓ ご参照)

 社債急落デフォルトリスクがクローズアップされている中国華融資産管理。一昨日(5/18)、米紙ニューヨーク・タイムズが事情に詳しい関係者2人の話として、国内外両方の社債保有者に「大きな損失」を強いる再編を計画していると報じた。つまりデフォルト処理を進めるということだ。

 この動きは華融だけではないだろう。当局はこれをモデルケースとして他の不良債権処理を進める算段だ。これでは*社債保有者はどのくらいコストを負担するのか読めず、処分売りに走るしかないその「お金」が国債に向かっているのが今回の金利低下の主因ではないかと筆者は考えている。

 通常デフォルトに関する法律や判例があれば、社債が急落しても債務整理コスト等から ”残存価値” を計算して「クレジット・トレーダー」が買値を提示することができる。そこでいかに ”鞘抜き” するかが彼らの「腕の見せ所」=食いぶちだ。単価が額面を割った株でも同様の手法が取られるが、「人治国家」中国ではこの手の「値付け」は難しいのかもしれない。

 3.資本逃避規制

 人民元は中国当局が厳格に管理しており、ドルや円に自由に替えることができない。発展途上の国々にはよくある政策だが、本来GDP世界2位の国が取るべき政策ではない。かつて日本も通った道だが、自国通貨を国際化したければ資本規制の緩和あるいは撤廃は避けて通れない。

 だが現在社会融資も含めた ”実質国家債務” が57兆ドル(約6,200兆円)もある中国で**巨額の資本逃避は命取りになりかねない。なるべく「お金」を中国に囲い込み、デフォルト処理の「大きな損失」負担等で借金の返済を進めたいのが本音アメリカと "喧嘩" している今はなおさらだ。

 **4/16のフォーラムで人民銀の金融研究所の周所長が「中国は最終的に元相場のコントロールやめる必要がある」と講演していたそうだが、なかなか意味深。多少輸出競争力を犠牲にしても、人民元高傾向 ↓ を利用して、海外の投資資金を集めたいのではないか "喧嘩" しているアメリカ向輸出が先細りと読めば取り得る戦略ではある。

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 ここ数日、人民銀がビットコインを規制する旨伝わり急落の引金になったようだが、これも「富裕層」の「お金」を囲い込む策と考えれば辻褄が合う。昨日、今朝とアジア時間で売りが強まる相場を見ていると「やっぱりな」という感もある。売った「お金」は先行き不透明な社債や株よりも、 ”とりあえず国債” となっても不思議はない。金利もそこそこ付く。

  "不自然な中国国債の金利低下" "状況証拠" から追ってみたが、やはりあまり良い傾向とはいえなさそうだ。10年国債は2020年末から2021年初にかけて一旦@3.30% → @3.13%程度まで急低下したが、その後景気の急回復を背景に@3.30%まで戻していた。それが再度@3.13%まで下がるというのは景気が減退しているか、何か "他の事" が起きている証左でもある。

 「損切丸」は「不良債権」が本丸と見ているがどうだろう。「資金繰り」的な観点で考察すると足りない「お金」をどうするのか、という問題に行き着く。国内だけで賄うには限界があり、それ故の「一体一路」「台湾問題」なのか。確かに他国の「国富」を奪ってしまうのが手っ取り早いが、かなり乱暴なやり方であり "喧嘩" の原因になっている。

 やはり "不自然な金利低下" は不気味でしかない。はっきり動きが見えるのは人民元の為替レート中国国債金利ぐらいだが、他の "状況証拠" も丹念に拾っていこうと思う。 ”破壊力” はビットコインの比ではない

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