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「お金のマニュアル」 -損をしないコツ- 其ノ6 お金持ちの理屈

 <お金持ちの理屈>

 タクシーに乗ると元証券マンで昔相場を張ってました、というような運転手さんと投資や相場の話をする機会がよくある:

 「運転手さん、持っているお金が100万円ではなくて、例えば100億円ならどうします? アラブの石油王みたいに。」

 大概、まずマンションを買って、旅行に行って、みたいな話になるが、まあとても使い切れる額ではない。金額が大きくなると、資産をそれ以上無理に増やす必要はないのだから、むしろ「最低限減らさないためにはどうするか」という考えに至らないだろうか?

 元本が減るのが嫌なら、例えば全額銀行に預金してみると - 預金保険の上限1,000万円/1行を考えると10,000もの銀行に分けなければいけない。だがこれは現実的ではない。ではどうするのか? よく言われるのが株式や外貨、不動産などに分散投資する手法で、現金は多くても20%前後、ほとんど持たないか、中には多額な借金までする人もいる。なぜか? 

 前節のベネズエラの例を思い出して欲しい。「お金持ち」が最も恐れるのは、実は「インフレ」や通貨価値の暴落による資産価値の減少である。現在の資産価値を維持することが最低限の要求なのだから、万が一を想定すれば資産防衛上分散投資をするのは当然とも言える。皮肉にも、これはある程度の金額を持ってみて初めて強く意識されるものでもある。

 <少額投資の誘惑 vs  プロのルールと引き継がれるお金持ちの伝統>

 逆に保有資金が少額だと資産が減るリスクよりも「少しでも増やしたい」という意識が働き易くならなる。それで欲をかいて投資に失敗、ということがままあるように思われる。

 投資に成功するには、極力主観や思い込みを排除し、自分のやっていることのリスクとリターンを客観的に把握する必要がある。しかし、人間は元来自分に甘い生き物なので儲ける事には一生懸命になれるが、自分に厳しい「損切り」などの守りがなかなかできない。

 プロの世界では、早く利益を確定させたいという衝動を抑えつつ利食いはより慎重に、逆に損切りはあっさりやれ、とよく言われる。早すぎる利食いと遅すぎる損切りを防ぎ、利益を最大化し、損失を最小限に抑えるためだ。

 プロ同様、お金持ちリーグでも同様のルールが「教育」を通じて親から子へ、子から孫へと伝統的に引き継がれていき、なおかつリーグ内で情報が共有されるため、市場を動かす力になりやすい面もある。結果としてお金持ちの投資はうまくいってもっとお金持ちになるケースが多い。

 その犠牲として一般の人々のなけなしのお金が失われていく構図だ。私の母親の株の例なども含め、端から見ていてもこのような状況は腹立たしいし、なんとかならないのだろうかと思う。やはり「正しい教育」しかない。

 其ノ7は銀行預金について。

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