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「金利」の上昇が止まらない。ー 世界的に「逆イールド」は解消へ向かう。

 米国債の売りが止まらない。特に10~30年ゾーンの長期債の値崩れが激しく、@5%へ向けて ”レベルチェンジ” が起きつつある。「お金」のないロシア、ブラジル、トルコなど ”二桁金利” の国でも「金利」は上がる一方だ。

 前稿.続・タイミングを計る日銀・財務省。ー 忍び寄る "灰色のサイ” の影。|損切丸 (note.com) でも紹介したが、2030年に世界の労働力が▼8,500万人不足するという予測もあり、「人手不足」解消は容易ではない。最も極端なのはUAW(全米自動車労働組合)が時給@2万2千円を要求しているアメリカだが、人件費の上昇は不可避。昨日ニュースにもなっていたが、日本から海外へワーキングホリデーに出る若者が増えるのも当然

 「ドル高」「円安」の終焉(?)。ー 「GDPギャップ」プラス転換が示唆する事。|損切丸 (note.com) なんて note. を書いてみたものの、現時点では "戯言" に過ぎない。日経平均の運用成績が他の市場を上回っている事からも日本を巡る状況が好転しているのは間違いないが、「需要」という観点からはまだまだアメリカに遠く及ばない。少なくとも「マイナス金利廃止」なんていう "お為ごかし" では「円安」の流れは止められまい

 日米欧の~30年までの国債イールドカーブ(  標題添付グラフ)を見ると、世界中で「逆イールド」の解消が進んでおり、2年ないし3年後に予想されている「利下げ」を契機に完全な「順イールド」=長期金利が短期金利を上回る状況、になることに備え始めている。

 一方唯一綺麗な「順イールド」で現状 "離れ小島” のJGBは、逆に「利上げ」を契機に金利水順を上げ、欧米の国債イールドに接近していく恰好。「円安」が止まるとすれば、双方のイールドカーブが金利水準、形状とも接近した状況になる時であり、FX"先読み" で動いていくだろう。「ドル売介入」で日中等の外貨準備から解き放たれる米国債もその一部だ。

 このように「金利」は様々な要素の集合体として成立しており、FRBや日銀の「利上げ」「利下げ」だけで決まるものではない。見方としては①「お金」の多寡②デフォルトリスクの大小、の2つが主要因になるが、これに「期間」の概念が入るのでより複雑になる。銀行を筆頭に動く「お金」も参加者も多いために恣意的に動かすのは困難な「金利」。故に「マーケットの正直者」と呼ばれ、そこから発せられるメッセージは示唆に富む。

 ①「お金」の多寡 ≓ 需給 ↑ の面からは、*FXの動きも考慮するとクロスボーダーでの「お金」の動きを把握するヒントになるため、グローバル投資家にとっては決定的に重要な要素。日本が30年近く続いた「ゼロ金利」から離陸するとすれば "大事件" に違いない。

 *「為替介入」については、国家が一時的に大量の売買を起こす事のみに意味があり、為替水準自体には影響を及ぼさない。短期的な「トレーディング」の観点からは大騒ぎでも中長期的「投資」の観点からはそれほど大事では無い。留意点としては、グリースパン元FRB議長が ”Conundrum” (謎)と言及したように、為替介入によってFXの圧力が金利市場に転化される事金利市場に "歪み" を生み「バブル」の遠因になったりする。ちなみに「為替」ではないが「国債無制限買取オペ」も立派な「介入」である。

 市場流動性の高いドル円とかJGBとかは理屈に沿って動くが、厄介なのは "Bold Markets"暗号資産はともかく、食品、エネルギー、鉄鋼等のコモディティ(商品市場)は生活を直撃。少数の市場参加者が牛耳っているだけに、一度火がつくと止められなくなる。今はWTIなど原油が大暴れだが、儲かっていないデイトレーダーが食い付くのも無理は無い。

 サウジなど中東産油国への配慮で@70ドル台から上がって来た原油価格だが、気が付けば@100ドル台目前。当然消費を直撃するし、ロシアの「戦争」を後押ししてしまう懸念も増す。不良債権に苦しみ、EV(電気自動車)に活路を見いだそうとしている中国にとってもあまり有り難くは無かろう

 もっとも価格が上がり過ぎれば「需要」自体を殺すことにもなりかねないので、この辺りで中東勢が「減産」を止める可能性もある。「インフレ」のコアからも外されているように、この価格変動は金融政策ではコントロール出来ない。一部の人が大好きな ”コストプッシュ” であり、まあ放っておけ、という事になるが、一攫千金を狙うととんでもないしっぺ返しに会うかもしれない。それほど市場規模の小さい "Bold Markets" ↓ は危うい

 年末に向かうにつれ、特に今年儲かっていないファンドやウォール街は「ボーナス」「首切り」回避に向け必死FXコモディティも目まぐるしく相場が動いてくるが、ここは「短期」と「長期」の視点を明確化し「トレーディング」や「投資」に臨むべき。おっと、これは政府や日銀にも言える事のはず。だが「長期」の方はあまり期待できないかもしれない。

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