日銀短観Dec19

日銀短観 景気判断指数 4期連続悪化 ー なのに日経平均は+500円高。

 「相場の真実」を示す典型的な例である。もちろん「日銀短観」が悪化したから株が買われたわけではない(笑)。

 マーケットは今後の「未来価値の変化」を織り込んで動いていく。それに対して経済指標や企業決算は過去の一時点の状態を示す数値に過ぎない。「日銀短観」を例に今朝の相場を考えてみよう。

 日銀のホームページに行くと ↑ のように「短観」について丁寧に説明が書いてある(この辺は、他の霞ヶ関の省庁に比べると幾分「庶民的」)。ポイントになるのは約1万社におよぶ企業へのアンケート調査であること。つまり「社長さん」が景気をどう見ているか、の「気分」を反映している。

 それでは4期連続で「社長さん」の気分を暗くさせているのは何か?最早解説も要らないくらいだが、「米中貿易戦争」である。特に中国に物を売ったり、中国で工場を稼働させたりする会社は不安が募っている。確かに中国から工場撤退が相次いでおり、中国国内の景気の悪化は明白だ。

 ここでもう一つ頭に入れておかなければならないのは「日本バイアス」とかく日本人は「最悪の事態」を考えがち。今の経営者はデフレリーマンショックを経験してきた人が多く、保守的な傾向がより強いのも特長。100兆円単位で手元流動性を確保したままというのが何よりの証拠だ。

 それでは今朝方日経平均が500円強も上昇したのはなぜか?昨日のNYダウがなぜ反発したかを紐解けばわかる話だが、トランプ大統領が昨日「米中間貿易に関して合意に向かっている」、とコメントしたことがきっかけ。つまり「社長さん」の気分を暗くさせている大元の中国の景気悪化に歯止めがかかることが株価急反発の要因だ。今朝の日銀短観は関係ない。

 短観のアンケートは約1か月かかって集計されるため、今朝の発表は概ね11月に集められたもの。仮に今調査したら短観の数値は違うかもしれない。しょうがないことだが、速報性が薄い分、市場の動きとはずれが出る。

 また、前に何度か触れたが、今のマーケットは「トランプ劇場」の中で展開されていることに注意が必要。中国の景気悪化も半ば「人為的」に作られており、「関税攻撃」を止めれば元に戻る類いの仕掛けだ。来年の大統領選を考えれば、トランプ大統領が株価の下落を招くような政策をとるはずがなく、「中国との合意」は結末としては既に決まっているシナリオ。あとは選挙との絡みのタイミングだけだ。

 **面白いのは日米の金利市場の反応だ。米国債市場はダウ反発に素直に反応するように10年債金利は1.90%台に上昇しているが、日本国債10年物金利は、株価より短観に反応して逆に@-0.02%と小幅低下している。黒田日銀総裁は、景気が持ち直すかどうかよりもこの短観を理由に追加緩和に乗り出すのではないか、との見方が強いのだろう。

 **結果、日米委金利差が開くことになってドル円は@109円台に乗せてきている@110円は相場のひとつの節目でもあり、ここを超えると動きが変わってくるかもしれない。@110円ストライクのノックアウト・オプション(@110円にタッチすると消滅するタイプのオプション。相場を急激に動かす要因として知られている)なども固まっていそうなので注視したい。

 確かにこのぐらい無茶苦茶なインフレ政策をやらないと、この「悲観的な社長」の気持ちを変えるのは容易なことではない。元財務官の黒田総裁にすれば、1,000兆円もの国家債務をなんとかしたい、という思いも強いだろう。はっきり言えば、景気が過熱しても***本格的なインフレを起こすまで金融緩和を止めない可能性が高い

 ***最近知ったことだが、バフェット氏も「最も高い税金はインフレ」という発言をしていたらしい。投資のプロの着眼点としてはもっともだが、大金を持たない一般庶民には実感できないところが皮肉ではある。

 暴落期待の株の売り方には気の毒だが、やはり勝ち目は薄いように感じる。特に日本株は、日銀の政策=ETF買やマイナス金利、は少なくとも安倍政権下では修正される可能性が低く、多少の上下があってもじりじりと値上りしそうだ。その対価で円安も相まって通貨価値が下落していく - つまり「インフレ税」。円建て投資を考える時には頭の片隅に入れておきたい。

 最近はネットなどでみかけるニュースやコメントも「現金・預金」のリスクについて触れる記事やコメントが増えているよう気もする。日本でも投資リテラシーが上がってきているのかな、と思うと何だか少しうれしい。

 あとは変なマルチ詐欺の事件がなくなればなおいい。「桜を~会」で取った写真を売りにするようなセミナーや投資勧誘には気をつけよう(笑)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?