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@9月17日、$レポ金利 ↑@10%高騰の余波 ー 上昇する年末越えドル資金調達のコスト。

 9月20日付.「NY連銀、19日もレポで資金供給へー3日連続。$レポ金利は一時10%へ上昇。」の続編。年末越えのドル資金の調達コストが急騰している。12月は米系銀行の決算月にあたってバランスシートを絞るため例年ドルの調達コストは上昇しやすいが、今年は特に年末と関係のない9月17日に突然レポ金利が10%に急騰、という出来事があったため、市場に警戒感が強まっている。

 ここではドル・円の金利差を反映するベーシススワップで例示してみる。

 年末を越えない1か月物 11/30~12/30(30日間)@+15BP(+0.15%)

 年末を越える1か月物  12/6~1/6 (31日間)@+125BP(+1.25%)

 年末初        12/30~1/6 (7日間)

 上乗せ金利=125BP-15BP)x31日間÷年末初7日間=+487BP(+4.87%)

 年末初(7日間)金利=通常時@1.50%+上乗せ金利+4.87%@6.37%

 (解説)年末を超えない1か月物が年末を超えた途端、+15BPから+125BPになったということは、ベーシスが拡大した部分の+110BPx31日間は年末超えのドル金利プレミアムが要因と考えられる。今年の年末は7日間なので、引き直すと+4.87%が年末超え7日間の上乗せ金利になるという計算。

 ドル・円ベーシス市場では、計算上年末初12/30~1/6(7日間)のドル金利を@6.37%で見ていることになる。見た目では9月の@10%(1日間)を下回るが、7日間なのでこれを1日に引き直すと、なんと@35.6%にもなる。仮に銀行が1,000億円取引すれば-1億円損失が出る金利だ。これを見て銀行のドル調達部門では悲鳴が上がっているという。しかもこれが上限ではなく、もっとコストが上がって損失が増えるかもしれないのだから。

 *金利上昇には上限がない。1992年の欧州通貨危機の時には、フランス・フランのO\N金利(今日~明日の1日間の金利、Over night)が@5,000%、アイリッシュ・プントでは@20,000%にまで上昇した。お金が取れなければ銀行は破綻であるから、どんな金利でも調達するしかないのだ。筆者が現役の時も、ドル・円ベーシスで50%(1日)のコストが市場で発生した。

 特に今年危惧されているのが市場機能の低下だ。筆者も含め投資銀行業界では経験のある資金トレーダーが続々と退職しており、銀行側の管理能力が衰えているのも事実だし、**管理する側の中央銀行も市場調整のノウハウを失いつつある9月のレポ金利急騰はその事を如実に示した格好だ。

 **筆者が現役の頃は、日銀の資金担当者から毎朝電話がかかってきて、銀行の資金繰り状況、そして必要な時は市場の状況をチェックしていた。それらの情報を吸い上げて市場調節課では毎日のオペレーション(資金供給や吸収)を行っていたのだが、今はどうなっているのだろう。

 こういう時は心理的なパニックが怖い。人間、追い込まれると予想外の行動に出ることがあり、特に経験のないトレーダーだと極端になりがちだ。破綻、倒産と背中合わせの「お金が足りない恐怖」はまた格別。これはやったことがある人にしかわからないが、断崖絶壁の崖っぷちで1歩下がれば崖下に転落の状態で、踏みとどまっている感じである。体中から汗。

 ご自分でお店や会社を経営されている方なら実感としてお持ちではないだろうか。「資金繰り」はいつでも経営者の悩みの種だ。

 主要市場の1つであるドル・円のベーシスがこの状況であるという事は、他の市場にも波及することは必至。なぜなら、ドル保有者はなるべく高い金利で運用しようとするからだ。中国も韓国も欧州も南米も同様にドルの「上乗せ金利」が転嫁されるため、どこの国、どこの銀行も、***今年の年末超えのドル調達は鬼門になりそうである。

 ***個人レベルでいえば、FXならドルショート(売り)はご注意を。100万円のドル売りポジションなら、年末越えで-1,000円=-10銭(あるいはそれ以上)の負けは初めから確定していることになる。株もドル調達力の弱そうな国のインデックスはそれなりにリスクが伴うだろう。

 この市場機能の喪失状態は、今後改善されるどころか投資銀行業の衰退に伴ってますます悪化していくことが懸念される。FRBも資金を潤沢に供給してくるだろうが、「市場との対話能力」も落ちてきておりそれだけでは十分には補えないだろう。「お金が余っていても足りなくなる」ことがあるのが銀行間市場の怖さだ。特に需要の高いドルには注意が必要になるだろう。(おそらくジャブジャブの円は問題なし)

 新たな「ブラックスワン」と考えておいた方が良さそうだ。

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