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株、債券、不動産の3つの商品性を併せ持つ「REIT」(不動産投資信託)其の2。

 マーケットを幅広く見ておられる読者の中には気付かれた方もいらっしゃるかと思うが、株の暴落に連れてJ-REITも暴落した。3月決算に向けて地銀勢が投げたのが主因とも言われている。

J-REIT指数

 2,000台で2019年中「絶好調」に推移していた「J-REIT」だが、株に引きずられて1,100台まで暴落。利回り表示で言うと3%台半ばだったものが一時6%台まで急騰した。過去10年の株、J-REIT、国債利回り推移がこれ ↓ 

J-REIT利回り

(計算式)利回り=A.配当/投資元金 或いは B.金利/投資元金

 ↑ A.B.の違いがお判りになるだろうか? B.がFixed Incomeと呼ばれる国債等の債券に用いられる式で、期間、収入が固定されているもの。10年国債で利回り1%の新発国債を買えば、10年間1%の金利が支払われる。

 対してREITA.の式になる。B. との違いは「配当」は業績や家賃収入により変動し、期限設定もないこと。もっと言えば「配当」の変化そのものが価格変動に影響することもある。どういうことか?

 例えば、今回の暴落でJ-REITの利回りが6%台まで急騰した、と書いたが、これはA.の分母(投資元金)減じたので「計算上」利回りが上がっただけで現在の配当が続くことが前提になっている。この理屈はも同じだ。

 しかし株なら企業業績が悪化すれば配当が下がり、最悪無配転落、なんてこともある。すると分母(投資元金)が減じても分子(配当)も減じるので「計算上」の金利は上昇するとは限らない。つまり株価はこの業績予想を織り込んで動くことになる。

 REITも配当が不動産賃貸料収入がベースにはなっているが、「利回り計算」の基本は株と同じだ。ただ、今回のような局面、株がダイレクトに業績予想の悪化を織り込むのに比べて、REITの方は動きが遅れることもある。企業や個人が当面の資金繰りを凌げば、賃料収入はすぐには減らないからだ。

 ただしこれも当面の話で、今回のパンデミックも長引けば倒産する企業も出てくるし、失業者も増える。そうすると空室が増えて賃貸料には下げ圧力が掛かり、利回り計算の前提も崩れる。つまりJ-REITの価格も先行きの賃料収入減少のリスクも織り込んで動くことになる。

 だから「6%!」と飛びつくのもちょっと考えた方が良い。蓋を開けたら実は3%だった、なんてことも。この辺りは一時ブームになった「アパート経営」にも言えることだが、6%とか8%とか利回り表示があっても預金や国債のように「固定収入」を示しているわけではないことに注意が必要だ。

 とはいえ、さすがにここまで下がると実需筋と思しき買いが入ってきてJ-REIT指数も1,500台、利回りで5%近辺まで急速に戻した。後は「中味」の検証ということになる。

 「東証市場に上場する不動産信託(Real Estate Investment Trust)全銘柄を対象とした浮動株ベースの時価総額加重型の株」(by TFX

 現在上昇されているREIT63本あるそうだから、その時価総額の加重平均ということになる。1つREITに泣き所があるとすれば、借入額が大きいファンドが多いことだろうか。今回のような危機局面では債務の多い企業は経営がより厳しくなる。REITの場合は賃料収入の安定化が鍵になるだろう。

 J-REIT銘柄は東京都心部や有名観光地に投資が集中しており、「見た目」は申し分ない。ただその「中味」「オフィスビル」「住居用」「ホテル」「リゾート」「物流拠点」と様々であり、個別の状況は微妙に違う。業界筋によると今の局面で強いのは「住居用」「物流」らしいが、さてどうだろうか...。

 こういう時に投資判断が難しいのは、お勧め銘柄は「買われすぎ」になりやすいということ。今回の危機に対して「住居用」「物流」は他の銘柄より「安全」ということになるのだろうが、平時に戻れば売られていた「オフィスビル」「ホテル」等の方が戻しが大きくなる可能性が高い。このあたりの「目利き」はまさに玄人の分野だが、興味深いとは思う。

 前稿でインデックス投資はリスクもある、と書いたが、相場が下がりに下がって勝負に行くときこそインデックス運用かもしれない。どの銘柄が最も戻すのかは判らないが、とにかく平時に戻れば全体が上がるのは間違いないわけだから。個別に買うより「安全」かも。

 「J-REIT随分戻したなあ。1,100台(利回り6%)は買いだったのかな...」なんて思いながらも、やはりここで書いたようなリスクは存在するわけで、まだまだ不確定な部分も随分ある。ここは腰を落としてじっくり構えよう。今日も東京の感染者数が増えているし、まだまだ不安だらけだ。

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