中国の「個人破産者第1号」?
中国の「不良債権」については、少ない材料を拾いながら「中国国債」の金利動向と絡めながら記事を綴ってきた ↓ 。
下がりだした中国国債金利Ⅱ ↓(7/13稿)を考慮すると、状況は思ったより厳しいのかもしれない。実際中国人民銀行は預金準備率を下げるなど金融政策を緩和方向に舵を切っており、国債金利は低下基調を維持している e.g. 10年@2.94%。「出口」を目指す日米欧とは一線を画しているが、GDP世界2位の大国なだけに見逃せないリスク要因だ。
そんな中、興味深い記事(7/20 JBpress 近藤大介氏 東アジア「深層取材ノート」(第96回)↓ )を見つけたのでここに記しておく。
"昨日(7/19)、香港に隣接する広東省の経済特区・深圳で、35歳の梁氏が "中国で初めて" 「個人破産申請裁定書」を裁判所から受け取った"
3/1に施行された「深圳経済特区個人破産条例」 ↓ に沿った対応。
”深圳経済特区に居住し、深圳の社会保険に続けて満3年加入している市民で、経営や生活上の返済能力が喪失した者、もしくは資金不足ですべてを返済できなくなった者は、人民法院(裁判所)に破産を申請することができる。それらは破産清算、再編、和解の申請を含む”
「えっ、 "初めて" ?」
「今まで個人が借金を返せなかった場合はどうしていたのか?」という素朴な疑問もあるが、梁氏は晴れて中国の「個人破産者第1号」に認定された。ただ自由主義陣営と違って**免除されるのは "利払い" のみで元金の返済は継続される。つまり「債務精算」とは若干ニュアンスが違うようだ。
**「利払い免除」で「債務」が「雪だるま式」に膨らむことは防げる。だが返済元金を「損失処理」しない、という事は「債務」はほとんど減額しない。「借金」は相続などで引き継がれるのだろうか? これでは真の意味での「不良債権処理」とは程遠いものになってしまう。
「元金」が残るなら基本線は「先延ばし」だ。ポイントは "最後のツケ" を誰が負うのか。広く浅く20年以上かけて「損失処理」した日本は「デフレ」という強烈なしっぺ返しを喰らった。さて中国はどうするのだろう。
政治体制が異なるため、社会の有り様は日本とはまるで違う。本来全員に等しく「富」が配分されるはずの「共産主義」だが、実際はアメリカ顔負けの「競争社会」。桁外れの「お金持ち」と「貧困層」に分断されている。それも公正な競争が明白なルールで担保されておらず、政治的色彩が濃い。
今中国で大きな社会問題になっているのが「自殺」の増加だという。かつては「夜逃げ」が横行していたが、アリババやテンセントのAIシステムによる「監視社会」が強化され「夜逃げできない社会」になった。「中国人は自殺しない」という俗説があったが、今や "自殺大国" に変貌しようとしている。最近メディアで取り上げられている「寝そべり族」も同根だろう。
「中国では日々、1万6,000社もの会社が生まれている」
「起業」という点でも中国はアメリカと肩を並べる国になってきている。起業数が一番多いのが ↑ 「個人破産第1号」が出た深圳で、2019年には50万5,127社も生まれた(含.個人事業主登録)。一攫千金を求めて、そこではおそらく***世界で最も熾烈な「弱肉強食」の戦いが繰り広げられており、3ヶ月芽が出なければ容赦なく切り捨てられていく。
***1994~1995年の1年間、筆者は香港に住んで中国はあらゆる面で日本人と ”逆” と感じた。相似点は "見た目" と漢字を使う事だけ。価値感や考え方は元・宗主国のイギリスの方が日本に近かったりする。現在の経済発展は「競争」を基本とする「アメリカ式」を礎にしている事もあるが「情け容赦のないやり方」に日本のような "甘さ" はない。
とすれば「不良債権処理」も20年もかけてノンビリやるような事はないのではないか。ある日突然事態が動きだす可能性が高い。「個人破産第1号」はその序章だろう。 ”ツケ回し” の順番としては:
①国内にある外国資本の没収
②CCP敵対勢力からの収奪
③中国国民全般(税、インフレ、その他)
④国外の外国資本収奪=戦争
②~③の過程で「内乱」を誘発するリスクもあることから、④の選択肢が先に来る怖れもある。今のところ「ブラフ」「脅し」の段階に留まっているが、①~④ ↑ のような「何か」はある日突然起こるだろう。最近の中国の ”海洋膨張” はそういうリスクを示唆している。
不動産を中心とした「不良債権処理」の道筋は日本と似通ってはいるが、何せ金額が桁違い。極端な「デフレ」や「インフレ」は「内乱」を誘発するリスクが高く、できれば避けたいのが本音。そうすると...。ワーストシナリオは心には留めておいた方が賢明かも知れない。特に隣国として。
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