桜桃忌の彼女

 白い乳房に、桜桃のような乳首。まるく、つややかで、口に含めば舌がとろけるかと思うほど、甘い。その桜桃をぼくに食べさせるたび、彼女は普段の品のよさを忘れたかのように乱れた。
 ぼくは「桜桃忌」という言葉を、読書が好きな彼女に聞いて、はじめて知った。そしてきょうがその日だということも。
「桜桃忌だから、したいの」
 彼女は妙なことを言った。
「……不謹慎じゃない?命日だからしたいって」
「命日だからよ」
 彼女は、言いながら、黒いブラウスのボタンを外し始めた。
「好きな作家が、生まれた日で、死んだ日だから。私も、死ぬほど気持ちよくなって、生きてる実感を得たいの。私、おかしいかもしれない。だけど……」
 彼女の桜桃が、はだけた布から見え隠れしていた。
 その張りつめた桜桃と、濡れたような輝きを放つふしぎな眼の色に、ぼくは情欲を抑えられず、立ち上がり、彼女に近づいた。