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アファンの森で自然共生をまなぶ

皆さん、こんにちは!
オカムラ歴8年目に突入しました、 岸 杏奈(きし あんな)と申します。普段はオフィス環境事業本部で製品・サービスの販促企画やWEBプロモーションに関する仕事をしています。

オカムラ8年目、岸杏奈です

今回は今年2月にnoteで公開した「釜石ワーケーションプログラムレポート」に続く第2弾として、「アファン1day研修」の様子をレポートしたいと思います!

↓ 第1弾の釜石ワーケーションプログラムレポートはこちら ↓

今回もたくさん写真を撮ってきましたので、ぜひ最後までお付き合いください!

「先生~!アファンってなんですか?」

はい、アファンとは一般財団法人C.W.ニコル・アファンの森財団が管理する長野県黒姫の里山「アファンの森」のことです。

オカムラは、生物多様性と自然共生に向けたアクション『ACORN』活動の一環で、2012年にアファンの森から馬搬によって運び出された間伐材を使って「ホースロギングファニチャー」の開発を始めるなど、数々の共同プロジェクトを行ってきました。

今回私が参加したのは、私たち社員に対して実施された体験型研修で、コロナの影響もあり実施は実に3年ぶりです。オカムラの事業活動が自然からの恵み(生態系サービス)に支えられていることを認識し、自らも環境活動についてアクションを起こしてもらおう、という目的をもって2011年から実施されています。

常日頃から、自社の活動に大いなる関心を持ち、地球環境全体についても強い危機感と責任感を抱いている意識の高いわたくしは、「これは私が行かずして誰が行く!」と意気軒昂に名乗りを上げ、上長の制止も振り切り、誰の目にもとまらぬスピードで・・・

・・・嘘です。前回の釜石以前研修に参加した仲間から「アファンも楽しいよ~」って聞いていたので、「え~、、、じゃあいくか~」くらいでしたすみません(笑)

何はともあれ、2022年5月13日、私は初めてアファンの森へと足を踏み入れたのでした!

長野駅集合!

今回の研修に参加したのは24名。オフィス環境事業本部、商環境事業本部、物流システム事業本部、生産事業所、デザイン、本社スタッフなど、さまざまな部門から参加メンバーが集まりました。今年は予想以上に多くの応募があり、応募締切のだいぶ前に定員を超えてしまったそうです。個人単位でも環境に対する関心や意識が変わってきている証拠ですね。

この日はあいにくの雨予報。運営メンバーは前日まで実施の判断を悩んだそうなのですが、長野駅に着いてみると・・・

快晴!!もはやすこし暑いくらい!!日頃の行いのおかげですかね~~!! ・・・といっても油断はできません。天気予報では14時頃から雨になっているので、すぐにバスに乗ってアファンの森へと向かいます。

雨予報を吹き飛ばし、長野は快晴でした!


アファンの森へ

ログハウス「アファンセンター」

長野駅を出発してバスで走ること約40分。大きなログハウス「アファンセンター」へ到着しました。ここでアファンの森財団のみなさんとご挨拶します。オカムラの参加メンバー同士の自己紹介も忘れずに・・・

まずはアファンの森財団の野口さんから、この森の成り立ちやなぜ森を整備する必要があるのかのお話を伺いました。

アファンの森財団・野口さんのお話

C.W.ニコルさんが荒れ果てた森に風を吹き込んだ

アファンの森が生まれたきっかけは今から50年以上も前のこと。

武道の習得を目的に来日したC.W.ニコルさんは、日本の美しい自然と、自然とともに生きる人々の暮らしに感銘を受けました。人々が里地里山の恵みを燃料や食料としていただく、そのために森に入り、まめに手入れを行うことで、森もまたいきいきと育っていく-そんな文化が、かつての日本では国中のいたるところで見られたといいます。

しかし、時は高度成長時代へ突入。人々の価値観は、次第に自然よりも経済中心へと変化していきました。里山は放置され、ササや藪に覆われて足を踏み入れることもできない「幽霊森」へと変わっていきました。鬱蒼とした暗い森には十分に光が当たらず、そこに暮らしていた動植物は生きる場所を失ってしまいました。

そのような状況を目の当たりにしたC.W.ニコルさんは、「日本本来の美しい自然環境を取り戻したい」という思いで、1986年に長野県黒姫の荒れた森を自ら買い取り、「アファンの森」と名付けました。

Afan(アファン)とは、ケルトの言葉で「風の通るところ(谷)」という意味です。ニコルさんの故郷であるウェールズには「アファン森林公園」という国立公園があります。この公園には、石炭採掘ではげ山だった場所が見事に森に再生された歴史があり、その事実を知っていたニコルさんは、同じように「自分もやろう」と森の整備を始めました。

まずは放置された森の地面を覆っていたササや藪を刈り、健康な木を残して枯れ木や育ちの悪い木を間伐していきました。そうすることで、残した木1本1本に日の光や土壌の養分がいきわたります。そして、木々の間に風が通り、地面まで光が届くようになることで、土の中で眠っていたドングリや様々な花の種が芽吹き始めます。そうして、森は再生への道を歩みだしたのです。

アファンの森では、この地道な活動が30年以上続けられています。すべては人間のためではなく、そこに暮らすさまざまな生き物のため。現在では1,000種以上もの動植物を確認でき、フクロウが毎年安心して繁殖できる豊かな森へと生まれ変わったのです。

1,000種以上もの動植物が生きるアファンの森

アファンの森散策

のんびりしていると雨が降り出てしまいそうなので、ここからは2班に分かれて森の中を散策します。

アファンの森を散策中

森にはガク片が白い花びらのように見えるニリンソウや、ニリンソウとよく似た葉を付けながら実は毒草であるトリカブト、小さな薄紫色の花びらが春の訪れを知らせるフデリンドウや湿地に群生して一面をきれいな黄色に染めるリュウキンカなど、さまざまな植物が生息しています。フキやワラビといった美味しそうな山菜もたくさん見られました。

湿地に群生するリュウキンカ

そして、よく見ると動物たちの痕跡も。コロコロとした小さなシカのフンや、木に登ったと思われるクマの爪痕もみつけることができました。

クマが木登りをしたときについたと思われる爪痕

森の中には、太いツルがぶら下がってブランコのようになっている自然の遊具もあります。予測できない揺れがスリル満点です。

自然がつくってくれたブランコ

昼食&セルフメディケーション

昼食は森の中でいただきます。

普段からマスクをすることが習慣化してしまっていると、なかなか自然の匂いを感じることもできません。嗅覚も人間の大事な感性の一部。今日はそれぞれ森の中の好きな場所を探して、マスクを外して森の匂いを感じながら昼食をいただきます。

この時間だけは、スマートフォンや電子機器の電源をすべてオフにします。参加者はブルーシートとお弁当を受け取って、思い思いに森の中へと散っていきました。

自然の中で昼食の時間

お弁当は黒姫の山菜がたくさん詰まったマクロビオティック弁当。自然の味を感じられる、ボリューム満点のお弁当です。忙しい日常では、ついついスマートフォンを眺めたり、仕事のことを考えたりしながら食事をとることも多いと思います。しかし、何か他のことをしながらの食事は十分な満足感を得られず、食べすぎや早食いにつながることもあるんですよね。きちんと目の前の食事に集中して食べると、味覚が研ぎ澄まされて食材本来の味わいが感じられるようになります。味付けは必要最低限なはずなのに、山菜自体にこんなにもしっかりとした味があるのか、と気づかされました。

マクロビオティック弁当
感覚が研ぎ澄まされ、食材本来の味わいを感じられるお弁当でした

昼食を食べ終えたら、それぞれ自由に“今”という時間を過ごします。「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てする」ためのセルフメディケーションの時間です。

わたしは靴を脱いでブルーシートに横たわり、目を閉じて森の音を感じていました。静かだと思っていた森の中も、じっと耳を澄ませてみるとたくさんの音で溢れています。鳥のさえずりや虫の飛ぶ音、木々が風に揺れる音や地面から聞こえる鼓動のような音。

「森って、意外と賑やかなんだなぁ」

そんなことを思いながら、この森に生息する1,000種以上の動植物の気配を感じ取ることができたような気がしました。

自由に過ごす "今" という時間

はたらく馬が森に帰ってきた

気が付いたらあっという間に時間が過ぎ、集合の合図とともに再び参加者が集まってきました。(ぐっすり眠ってしまった参加者が戻ってきていないことに気が付いたのは、もう少し後のお話。笑)

ここで、アファンの森のアイドル、茶々丸と雪丸の登場です!

茶々丸(右)と雪丸(左)

かつて日本の里山では多くの馬が物を運び、耕し、伐採した木を運ぶなど様々な形で活躍していましたが、里山の衰退とともに馬の姿を見かけることもほとんどなくなりました。

森を整備するためには適切な間伐が必要となりますが、伐採した木を森の外に運び出すためには大型のトラックと、トラックが入るための道路が必要です。森に悪影響を与えずに間伐材を運び出すにはどうしたら良いか、C.W.ニコルさんがたどり着いたのは「ホースロギング(馬搬)」という方法でした。

ホースロギングとは、ヨーロッパでは今でも活発に活用されている林業技術です。馬に木材を託すことで、車体の重い重機に比べて地表へのダメージは極端に少なく、新たに作業道をつくる必要もありません。重機が入れない斜面でも馬なら入ることができ、馬が地面を適度に耕すことで、山菜もよく取れるようになるといいます。

日本でも、数十年前までは当たり前に行われていた馬搬ですが、現在ではその技を受け継ぐ人は岩手県遠野市に残るだけとなりました。2015 年、アファンの森財団では「森にもう一度はたらく馬の姿を取り戻したい」という願いから、アファンホースプロジェクトを立ち上げ、2頭の馬を迎えました。

それが、茶々丸と雪丸です。2頭は重たい荷物を運ぶことを得意とする品種・道産子(どさんこ)の血をひいています。しかし、馬は本来草原で生きる生き物。森での様々な仕事に慣れるにはトレーニングが必要です。2頭は立派なはたらく馬になれるよう、現在トレーニングに励んでいます。

本当にかわいい子たちでした

森の手入れ体験

可愛い馬たちに癒されたあとは、しっかり身体を動かします!

参加者はヘルメットを着用し、ノコギリを腰に装着して森の奥へと入っていきました。アファンの森財団はその実績が国から認められ、隣接する国有林もまとめて手入れすることが許されています。今日はこの国有の人工林で、森の成長に必要不可欠な間伐のお手伝いをします。

まだ手入れが行き届いていない森の中は、下草が茂っていてとても歩きにくい・・・。おまけに斜面もどんどん急になってきて、目的地に到着する頃には参加者全員が汗だくになっていました。

森の手入れをしにいきます

森を健康に保つために、適度な間伐は必要不可欠です。成長途中にある木を伐採し、木と木の間の空間をあけることで、地面に光が届くようになります。そして、間伐した木を適切に「使う」ことも、森のライフサイクルとしては非常に重要なのです。

この日は長年林業に携わっていた安藤さんが、実際にわたしたちの目の前で間伐するデモンストレーションを見せてくれました。木を倒すといっても、それほど単純な行為ではありません。倒した時に周りの木を傷つけないよう、まずは倒す方向を見定めます。方向を決めたら、倒したい方向から木の根元にチェーンソーを入れ、幹の半分くらいまで三角の切り口を入れます。そして、今度は反対側から真横にチェーンソーを入れていくと、木がだんだんと狙った方向へと傾いていきます。ここで重要なのが、幹の中央部は敢えて1センチほど切らずに残しておくこと。そうすることで残した部分が蝶番のような役割を果たし、まっすぐと狙った方向へ倒すことができるのです。

安藤さんによる間伐のデモンストレーション
切り株に残った1センチほどの筋が、上手に間伐できた証です

間伐した木はそのままにしておくわけには行きません。動物たちの道を塞いでしまうこともありますから、細かく分割して邪魔にならないところに避ける必要があります。ここで私たちの出番です!軍手をはめて、小型のノコギリで間伐した丸太を等間隔に切るお手伝いをします。

しかし、これがかなりの重労働・・・。はじめのうちは楽しく会話しながら切っていたものの、幹の中心部に近づくにつれて刃が挟まって切りづらくなり、力が必要になります。中腰での体勢もつらい。気づけば額からは大量の汗が噴き出ていました。「もうすぐ切れそう!」というところで終了の合図が・・・。それでも諦めなかった参加者は、他の参加者に見守られながら何とか丸太を切断しきることができました。

丸太を切るのがこんなに大変だったなんて・・・
なんとか、切れました!

森の手入れ体験を終え、アファンセンターに戻ったちょうどそのころ、空からはポツポツと雨が降り始めたと思ったら、ほんの数分で本格的なザーザー降りに。なんとかすべてのアクティビティを終えることができ、ギリギリセーフでした!森の女神に守られていますね。

汗をかいた服を着替え、改めて「エコロジーとは何か」についてのお話を聞き、研修プログラムは締めくくられました。

エコロジーとは何か、のお話

アファン1day研修を終えて

最後に、ひとり一言ずつ研修の感想を言っていきます。元々自然に興味があってとても楽しい時間を過ごせた人や、来てみるまでは全くアファンについて知らなかったが新しい知見を得られたという人、セルフメディケーションが有意義だったという人や、事業所でのビオトープ建設に活かしたいという人など、皆さんさまざまな学びを得られたという感想でした。

わたし個人としては、学びが大きかったことはもちろんですが、何よりアファンの森財団の皆さんが真剣に森を愛し、その森をほかの人にも好きになってもらいたいという想いが強く伝わってきたことが一番印象的でした。C.W.ニコルさんが日本を愛し、日本の自然を愛していたのと同じように、その想いは確実に受け継がれ、森に還っています。

近年では環境保全やサステナブルというキーワードが注目されていますが、その実現には地道な努力とひとりひとりの意識改革が必要です。私たちの世代が変わっても、この森は変わらずに生き続けてほしい。過去の過ちを繰り返さないよう、里山の生物多様性を守り続けてほしい。そんなことを心から感じることができた、体験プログラムでした。

参加者全員で。おつかれさまでした!

追悼

一般社団法人C.W.ニコル・アファンの森財団の創設者であるC.W.ニコル氏は、2020年4月3日、直腸がんにより永眠されました。心よりご冥福をお祈りいたします。