J-H ダングルベール : シャンボニエール氏のトンボー

昨年10月の演奏会の映像です。
この演奏会はフランスバロックばかりのプログラムでしたので、ソロ曲はダングルベールの作品を選びました。
ジャン・アンリ・ダングルベール(1629-1691)はフランスの作曲家で、フランソワ・クープランやドイツのヨハン・セバスティアン・バッハよりも更に前の時代です。
唯一出版されたのが『クラヴサン曲集 Pièces de clavecin』で、今回弾いた「シャンボニエール氏のトンボー」を含む組曲や、リュリの作品の編曲もあります。
何曲か弾いたことはあるものの、人前で演奏するのは初めてでした。


チェンバロを始めてまず戸惑ったもの、バロックピッチ(415Hz)、そして「プチッ」という独特のタッチ感。
ピアノの「叩く」動作に長年慣れてきた身には「指ではじく」感覚がずっと馴染めませんでした。

ピアノで楽々弾けていたバッハの平均律やフランス組曲、イタリア協奏曲などを弾くと指が転ぶ・・・・

ようやくそれらに慣れてきた頃、次は「ゆったりした曲」に苦心するようになりました。
ほぼ2分音符や4分音符のみの、見た目「簡単な楽譜」。なのに楽譜どおりに弾いても全くサマにならない。。。

指の上げ下ろしの速度や、装飾音の入れるタイミング、多声部の僅かな音のずらし方などで全く和音の色が変わります。加えてチェンバロは1台ずつが違うので、家と先生のお宅でもまた倍音の響きなど違ってその都度、弾き方も変えていかないといけません。

とにかく「美しい響き」を求めてじっくり自分の出す音に耳を傾ける作業(練習)をしていて、ある日「この感覚って、大学の卒業試験でドビュッシーを練習していたときに似ているな」と気付きました。
ドビュッシーの「映像第1集」、その1曲目「水の反映」で「音の滲みと煌めき」をいかに表現しようか、と苦心したことを思い出したのです。

ずっと「苦手意識」があったフランスバロックですが、近代にもそのエッセンスは受け継がれているのですね。「国民性」というものかもしれません。

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