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沢マンギャラリーの思い出 おかね編

ギャラリーとお金
新宿眼科画廊新聞に2017年3月から
2年ぐらい連載した文章です。(ちょい変更しています)

アートってお金かかるしビックリするほど儲けることが出来ません。高知の老舗ギャラリーなど作品が売れなければ心優しいオーナーが買い取ってくれます。そんなほのぼの風景があるから、ギャラリー経営がうまくいかないのでしょう!お金持ちにしか出来ません!

沢田マンションギャラリーは自主運営なので、販売手数料は貰わずに、みんなの年会費で運営していました。作品をバンバン売る作家もいて、売上100万円なんてものありまし。ほんと羨ましい限りです。

お金がなければ無いなりにやろうをスローガンに運営をしていましたが、巨大プロジェクトが舞い込んできたら、どうしても必要なものがお金です。

ギャラリーを立ち上げて4年目のある夜にメンバーと飲みながら5周年の企画会議で酒も入っていたので気楽に奈良美智さんのTwitterに「高知に遊びに来てくださーい」とリツイートしたことから始まった沢マンギャラリー最大級観客動員の「3日間奈良美智・ドローイングショー」が実現しました。
開催するにあたりお金がいるんですよね…今回の展覧会は販売しないので、自らお金を用意しなければならず、いろいろな諸費用が恐ろしいほど必要なんです…
アートプロジェクトといえば助成金、「助成金に頼ってる団体なんてダサい」と言い続けていた自分を恥じながら、コツコツと高知県文化財団の助成申請書類を書くわけですが、あの奈良さんの展覧会、落とすわけ無いと余裕で書いていましたら、思いっきり落とされました。

だいたい助成金ってかなり前から申し込まないともらえないものが多く、目の前が真っ暗になりましたが、高知県が新しく創設した文化助成金が誕生したこと知り申込にも間に合うぞと、今度はギャラリーメンバーが集結し知恵熱が出るほど考え抜いて無事に合格。
それでも予算が足りず沢マングッツを強引な販売で10万円を稼ぎだし、なんとか展覧会は無事終了。

助成金をもらった団体が集まり結果報告会なるものがあるのですが、各団体が今後の参考にと意見を求められ企画終了後に予算書を提出するのですが、何に使ったかの証拠となる領収書の提出が無いんです。なので「来年から領収書の提出が必要」と提案した瞬間にざわつき出し、「お前余計事言うな」と無言の視線と事務方は仕事が増えるから現実的ではない…元新聞記者はアートでそこまで求めたらダメだよと言う始末。これだから助成金て嫌いなんだー!

価格の決め方

前回はアートとお金(ギャラリー運営)の話をしましたが、高知の作家たちが直面する作品の値段をいくらにするか問題があります。
自分はアート系の大学&専門学校で勉強をしなかったので、なんだかよくわかりません。そこで、高知の先輩作家などに聞いてみるのですが、「高くしたら売れるよ。興味のあるお客さんがいたら、半額にしたら買ってくれる」や某有名工芸家は「時給換算っす」と基準がよくわかりません。

高知のアート界を牽引(権力)している方々は高知県展覧会(高知新聞主催、通称県展)の重鎮たちですが、その中でも最も発言力がある人たちが「無鑑査」さんです。
どのような形で無鑑査さんに成り上がるのかと言いますと、県展で1等賞を3回ゲットで無鑑査さんです。(高知でしか通用しません)そしたら、作品が100万円で売売れるそうです。お教室も開くことができます。
しかし、その他のアーティストたちは悲しいかな10万円ぐらいで作品を売るがぜよ(土佐弁)

そして、もっと不思議な言動をする作家たちがおります。「一度値段を決めたら値段を下げてはいけません」…?これアート界の都市伝説です。
値段を下げたらいけないとは物価は関係なく常に作品はインフレ状態なのですか?バブル時にアート作品が上がり、バブル崩壊後に暴落したよね。なんてツッコミを入れたら、作家たちが口を揃えて「難しいことはよくわからない」です。

高知にコマーシャルギャラリーが少ないので、なんだか価格が曖昧になるわけです。わたくし沢マンギャラリーの代表なんてやっていたら、展示作家から価格の相談があります。無責任ですが「好きな値段をつけたらいいよ」と言い続けていました。売れなければ次の展覧会で値段を下げたらいいし、全部売れたら次回は値上げです。一点ものなので、相場ってないような気がするわけで、美術品の「神の見えざる手」です。買手と売手の合意で決まるのです。値段をつけても買い手がいなければ現金化できないので、ざんね〜んです。

そういえば行きつけの飲み屋「にこみちゃん」で友人たちとアート話に花を咲かせていたら、見知らぬ男性がいきなり話しかけてきて「クリスチャン・ラッセンすごくいいですよね〜私買いました」「…」

やはりイルカの絵だろうが、好きな作品を買うのが一番です。

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