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私vsテキサス・チェンソー

コンビニから真っ直ぐ北上した先にソラの家はあるよとアプリが告げました。きっとすぐ先の住宅地あたりだろうと思い、何本もエナジードリンクを受け取ってから走り出しました。

ちょっと行った先では、真っ直ぐの道と右折の道で分岐していました。私はそこで右折すると思っていました。右折すると住宅地があるからです。しかしナビは直進するように告げます。

直進した先には何もないことは知っていましたが、やはり何もありません。左右には何かの畑が広がり延々と続いています。そのまましばらく走ると山道に入りました。

山道は細く曲がりくねっていますが信号もなく、法定速度も45マイル(約70キロ)なので、皆かなり飛ばしております。

私もそれなりの速度でついていくと、ナビが「左折します」と大きな声で言います。
ちらっと左を見ると、そこに道はなく、鬱蒼と木が茂る崖になっていました。

しかし、山の斜面の、更に下の方に、木に隠れて民家のようなものが見えました。

道なき道を行けと言われても無理なので、どうしたものかと思っていると、少し先の道の脇にポストがひとつ刺さっているのが見えました。レーシックで1.2まで回復した目に全神経を集中させます。そのポストにソラの家の番地が確認できました。

ポストが刺さっている狭いスペース目掛けて左折すると、細い砂利道が山の間を下るように伸びていました。石を踏むじゃりじゃりと言う音を聞きながらゆっくりと進みます。

この車で走って大丈夫な道なのでしょうか…?


砂利道の行き止まりには、ソラの小さい白い小屋と、同じように小さい白い軽自動車が停まっていました。

車を停めて、砂利をじゃりじゃりさせながら扉の前に近寄ると、部屋の中から何匹もの犬が吠える声が聞こえました。ソラのメモには「ノックしないで」と記載がありましたが、石と犬という優秀な防犯システムの前には私の抜き足差し足も通用せず、私がそこにいる事をまんまとお知らせすることになってしまいました。


電波があまり届かない森の中にひっそりと佇む古屋の中から、獰猛な犬とチェンソーを持った殺人鬼が出てくる所を想像して1人で勝手にぞっとしながら、扉の前のウッドデッキにコンビニの紙袋を2袋置き、じゃりじゃりと走って車へ戻りました。

時速70キロ以上で走りまくる現地の人々に砂利道から合流し、電波のよく届く所まで戻ってきた時は少しホッとしました。

チェンソーでバラバラにされずに済みましたので、次の出前に向かいたいと思います。
(ソラは普通のお客様で、何ひとつ私を脅かす危険性はなかったと言う事は念のためお伝えしておきます。)

所要時間:25分
配達料:$2.59
チップ:$6.82

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