丸山薫とシャガール
小樽出身、大正から昭和を一筋に駆け抜けた稀有の詩人伊藤整が著書『若い詩人の肖像』の中で、同時代の作家の作品を評した箇所がある。
他と見比べ自分のものが劣ると思う事は無かったが、唯一丸山薫と云う詩人には到底勝ち目がなかったと記して居る。
丸山の詩編には『海』を題材にした作品が多々有ったが、その絵画的とも言われる独特な手法の中で、度々登場するのがマルク・シャガール、その人である。
丸山の思い描く輪郭や色彩、リズムは強烈な潮騒のうねりと共にシャガールの絵画と重なる。
自分が学生の頃、親友の田中某が超高級画商の倉庫番のアルバイトをして居て、ある日
『何か見たい作品はあるか?』
と聞くので、迷わず
『マルク・シャガール!』
・・と答えたものだ。
一週間も経っただろうか?
ある蒸し暑い夏の晩、本物の絵画と酒を一本車に乗せて、突然やって来た。
『内緒だぜ・・』
・・と・一晩だけだったが、その絵を肴に酒を酌み交わしたのが懐かしく想い出された。
あぁ、時は速し!
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