すこぶる後天的な、ものを買う動機
母とそうじ機を買いにいった。
「壊れたのが、きよちゃんのくるタイミングで助かったわ」
孫がくるとはりきり、ふだんは放置しているホコリだらけの部屋まできれいにしていたところ、「もうムリです」とそうじ機が根をあげたそうだ。
母は掃除が苦手で、あまりしない。
なので冗談ぬきで、そうじ機が壊れるほどすごいホコリだったのだと思う。
ただ、今までのそうじ機は重すぎた。
掃除しようという気持ちが遠のくのも理解できる。
今度は軽くてゴミ捨てが簡単なものを選ぼうね、などと話しながら、家電コーナーに案内してもらう。
中に、ひときわお安いそうじ機があった。
「スペックは他と変わらないのに、なぜこんなに安いんですか? 」
「展示現品なんです。ソレ」
二万七千円。
値札をめくると、もとは五万三千円だった。
「これにする! 」
即決の母。
いやいや、待って。
毎日(ではないかもしれないが)使うそうじ機、大事だよ。
これから体力がおとろえていくのだから、
重くないか試してみて。
ほら、これなんか軽いしお値段も変わらないじゃない。
しかし、母の心はゆるがなかった。
◇
「本来は五万するものが二万七千円! 」
「このお値段で買えるのは、あと1台だけ」
ピコーンと母の脳裏に浮かんだのは、こんなコピーだったかもしれない。
母は、よいものを安く買い、長く使いたい人なのだ。
「いいお買いものができたわ」と満足そうだった。
一方、もし私だったら、
何台も試用し、これだ! というものを買っただろう。
吟味して自分にあうと感じる納得感こそ、大切だと思っているから。
同じDNAをもつ親子でも違うものだ。
◇
買い方って、その人の価値観に直結しているんだな。
そういえば私自身、お金の使い方が随分変わった。
ここ数年、洋服を買ったのは数えるほどだ。
関心がなくなったわけではなく、
会社勤めをしている同年代の友人に会うと、
おしゃれだな、素敵だなと思う。
けれども、うらやましいとは思わない。
自分の中で優先順位が変わったのだ。
息子の感性がみずみずしい時期に家族で旅行にいきたいし、
新しい洋服を買うかわりに、ライティングのノウハウを得たい。
「何にお金を使うか」
「どんな風に買うか」
これらは、今いる場所や大切にしていること、
大げさにいえば、人生観までも覗かせてしまいそうだ。
老いた母と並んでゆっくりと歩きながら、そんなことを考えていた。
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ほぼ毎日note12日め。
私的なnoteにおつきあいいただき、
ありがとうございました。
また明日!
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