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2022年J2第16節横浜FC-徳島ヴォルティス「エスしか」

横浜が2連敗で迎えたのは徳島。昨年10月の残留争いの中での劇的な勝利の余韻は残っているだろうか。高木が年1回あるかどうかのミドルシュートを叩き込んで逆転して、渡邉が追加点を挙げて5-3と徳島を振り切った。雨の中で、残留争いのチーム同士の直接対決、残り6試合といった盛り上がる要素はいくらでもあったのに比べると、このゲームはいまいち自分の中で盛り上がりに欠けていた。
5試合勝利なし、2連敗中のチームと、ルヴァンカップの影響からか中位に甘んじているチームの対戦。盛り上がる要素があるとすれば、このゲームをきっかけに再び立ち上がる流れを自分たちが作れるかどうかだろう。

この日のマッチデイスポンサーとなったのはエス歯科グループである。入場時に歯ブラシをいただき覚えているだろう。このグループが掲げる3つのSは、「Smile」「Satisfaction」「Safety」である。お金を出してくれるこのグループが提供するこの3つのSを、果たして横浜も提供できただろうか。その観点から試合を振り返りたい。

Smile(笑顔)

この日はフリ丸まみれDAYとして、フリ丸なりきりキャップが発売開始。スタンドでもチラホラと被り物をしているサポーターがいた。ユニフォームにタオルマフラーといった定番の応援アイテムもいいが、こうしたマスコットキャラクターを使ったアイテムがあると華やかになる。もちろんフリ丸カチューシャも。某夢の国に行くとこうした被り物はよく見かけるし、街中で見かけても夢の国に行ったんだと想起される。ユニフォームを着て街中を歩くより楽しんでいる感じが出ていると思う。あ、自分はサイズが無理でした。。。

Satisfaction(満足)

正直に話すと多分今シーズン一番感想が難しい試合だった。無敗を続けていた時より、連敗した時より心にガツンと来るものがなかった。勝利はうれしいし、敗戦は苦しい。それでもこの勝利は何か違った感触があった。
目線が変わりつつあるのかもしれない。シーズン中盤で首位ではなくとも、ライバルの状況考えたら勝ち点3を積み重ねる可能性は高く、横浜もそれはほしい。そして試合内容見ても、少なくとも負けてはいけないもの。挑戦者ではあるが、例えば勝ち点3は上位チームになればなるほど昇格争いについていく為にマストな感じが強く勝ち点1では敗戦に近く、下位にいるチームは期待できる勝ち点が全体的に低いのだから勝ち点1でも積み上げることに大きな意味があり、上位チームの勝ち点1とは意味が違う。
徳島昨年残留争いをして2点差に食らいついてきたチームとは全く別のチームだった。昨年10月の試合のスタメンで、この試合でもスタメンを張っていた選手はゼロ。ベンチにいたカカ、西谷、バケンガも出場時間的には20分から30分では昨年の激闘をなぞるには時間が短すぎた。徳島・ポヤトス監督が繰り返し日々の成長を口にしていた通り、怖さは一美が入るまで感じることはなかった。

徳島の戦術の浸透度の低さに横浜は助けられた。ボールをつなぐサッカーを標ぼうしていたと思うが、その割にセンターバックはサイドに長いボールを簡単に蹴っては横浜が回収する展開が前半から続いた。
横浜はこのゲームでは思ったよりも前線にプレッシャーをかけていない。こちら側の事情なのか、相手の状況を勘案したのかはさておき、この修正は守備の安定感を生んだ。相手の4バックに対して3枚で対面して、ボランチの選手の面倒を中盤が見ると徳島はサイドに逃げていく。サイドに長いボールを入れるサッカーは次第に対応されて前半の中盤以降は横浜の流れとなった。徳島にとっては思ったよりも横浜が出てこないので、ロングボールでサイドを攻略できず後手に回った部分があった。
ボールを奪った横浜は、徳島のボランチの脇のスペースを攻略。伊藤は相手を何度もはがした。

前半41分、ゲームを動かしたのは横浜。ガブリエウの右サイドへの大きなサイドチェンジのボールを受けたゼインは、クロスを入れる。中で待っていた小川とは合わなかったが、彼が右足を上げてボールに触れると意表を突かれて徳島の選手は体勢を崩した。伊藤も体勢を崩していたが、懸命に伸ばした足でボールを流し込んで横浜が先制。チームとしては3試合ぶりの得点となった。

後半20分にはコーナーキックからガブリエウがゴールを決めて追加点。徳島・藤尾が目測を誤ってクリアできず転がってきたボールをフリーでゴールに叩き込んだ。

この失点を受けて、徳島は一美、バケンガ、カカを入れてシステムを変えて攻勢に出るのだが、バケンガを完封。サウロ・ミネイロ、齋藤、山谷を入れてカウンターを前提にしつつ、齋藤が中央でボールを握れば相手をいなしながら時間を消費させていく。この日はよい形でゲームが進んでいる。

Safety(安心、安全)

ところが謎の失点力はそのまま。2-0で終えられることができたはずだが、味方同士で接触して、ボールを散らせないまま相手に奪われてからスルスルとボールを運ばれて失点。一美は古巣となる横浜相手にゴール決めるのはやはり得点力はあるので仕方ない部分もあるが、そこまでの流れの悪さは払拭できないままだった。攻撃が看板のチームだから守備は放棄して良い訳ではない。こうした一つ一つの積み重ねが後々得失点差のアヤを生み出す。無失点のゲームの少なさは他のクラブと比べるとアキレス腱になるかもしれない。この日の徳島のパフォーマンスを鑑みると、無失点で凌ぎきれないのは辛い。

2-1で試合は終了し、後味の悪さも感じた。エス歯科グループが掲げた3Sのうち、「安心安全」を横浜は提供できなかった。メインスタンド中央に陣取ったスタッフにはどう映っただろうか。四方田監督も「改善していきたい」と話しているが、安心安全になるには何が足りていないのだろう。

そして横浜は今年1年でのJ1昇格を目標にしている。上記3Sに加えて、昇格のSをサポーターに提供する責務がある。この日は、第1クールみたく前線からの激しいプレス一辺倒から変更し、罠を張って相手のボランチを掴みにいって自分たちのチャンスを増やした。前節の秋田戦で負傷した高橋は長期の離脱になってしまったが、守備の要のガブリエウ、中盤でボールを運べる齋藤の復帰はうれしいニュース。どちらも負傷で離脱しており、その間にチームの勢いは下降線を描いていた。ボランチ起用されやた和田は、相手の攻撃を断つ良い守備を見せており、今後どういった起用があるのかも楽しみである。

2連敗程度でへこたれていられない。昨年一緒に降格した相手にこれで勝ち点9。上がるんだ。帰るんだ。やはり目標はエスしか(エス歯科)ない。

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