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オンラインがオフラインのインフレを引き起こす

先日から演奏動画をSNSでアップしています。
「よかったです」「ありがとう!」
という声が大半ですが、

「プロなのに無料で配信するのはちょっと、、、」
という同業者の声もあります。

ま、僕はともかく、一緒に演奏してくださった2人はプロとして活躍されている方ですから、言わんとしていることは分かりますf^_^;

今回はプロが無料で配信するってどうなの?ってところを書いてみようと思います。

プロが無料で配信するとダメなの?

まず、どうしてプロが無料で配信するとダメなのでしょうか。

本来なら演奏を聴いていただき、
目には見えない何かを受け取っていただいたその対価としてお金をいただく、というのが演奏家であり、表現活動全般をされている方の生業というものです。
特殊な状況とは言え、無料でプロの演奏が聴けるのが当たり前になってしまうのではないか、というところに危機感を感じていらっしゃるのだと推察します。

お金を払わなくても、質の高いものが無料で観たり聴いたりすることができる、
そういうコンテンツが増えれば増えるほど、演奏というものの価値がデフレーションを起こすのではないか。

たしかに、一杯30円のうどん屋さん、40円のラーメン屋さんが多店舗展開したとしたら、ほとんどのお店は商売上がったりです。

一線級で活躍するトップアーティストたちが、無料でLIVEをしだしたら、他のプロたちやセミプロ、ハイアマチュアの人たちはきっと困るでしょう。

市場が壊れる、価格破壊が起きる、それによってクリエイターたちが死んでしまう、ということだと思います。

オンラインでの配信がもたらすもの

最初の問いに戻ります。
本当にそうでしょうか。本当にそうなるのでしょうか。
考えてみたいと思います。

数年前、キングコングの西野亮廣さんが、自作の絵本「えんとつ町のプペル」をWEB上で無料公開した時も同じように騒がれていました。
絵本が売れなくなる、クリエイターたちを殺す気かと。
結果は皆さんご承知のとおりです。

僕の考えでは、
オンラインが加速すればするほど、オフラインの価値、リアルの価値はより高まる。

現に皆さん、ZoomやSkypeで話してばかりで寂しくはありませんか?直接会いたくありませんか?

大切な人と手を握り合い、思いっきり抱きしめたくありませんか?

コロナの前と今とでは、
リアルの価値がインフレを起こしています。

オンラインがオフラインのインフレを引き起こす

クラシックの世界から少し離れてみましょう。
好きな歌手やアーティストの曲を聴いたりすると思います。
何で聴きますか?
今の時代、YouTubeやSpotifyなどオンラインで楽しむ人がほとんどでしょう。
SNSやYouTubeでアーティストの存在を知る、歌声を聴いてファンになる、何回も何回もYouTubeで観る聴く、いつか生で観てみたい、LIVEに行きたい!
こういう人が圧倒的に多いのではないでしょうか。

YouTubeで観れるから、もういいや、生では観なくてもいい。満足。という人よりも、
LIVEで聴きたい!会いたい!という欲望を喚起されるはずです。

CDやレコードが世の中に生まれた時も同じ論争がありました。
「CDはダメだ!CDで聴けるなら、ホールに足を運んでもらえなくなる」
と騒ぐ人がいたそうです。
実際はどうでしょうか。言うまでもありません。

イノベーションを受け容れること

仮にSNSで動画を配信したのではなく、TVなどのマスメディアで流れていたら、その方は何て言ったでしょうか。

仮に我々がノーギャラでTVに出演していても
その方は「TVみたいにみんなが無料で観れるものに出ないでください。プロの演奏がタダで聴けるのを当たり前だと思うでしょ」
と言うのでしょうか。
きっとそんなことは言わない。
「TVで歌うなんてすごい!ギャラはなくても、それ以上の価値がある!」と騒ぐ気がしてなりません。
なぜか。TVはよく知っているものだけど、インターネットはよく分からないものだからです。

でも本質的には同じではないですか?
マスメディアか個人メディアかという違いであって、本質は同じなのです。
でもこうも捉え方が変わるのです。

SNSやYouTubeを甘く見過ぎているとすら思います。僕は非常に可能性を感じています。

今までは、
マスメディアに取り上げてもらわなければ有名になれませんでした。

それが現在では、
誰もが個人で自分のメディアを持ち、世界中の人に直接いつでもどこでも発信することができるようになりました。
ものすごいイノベーションです。

先日、プロのオーケストラが無観客でのコンサートやオペラ公演などをYouTubeLIVEやニコニコ生放送などで配信していました。とても素晴らしい取り組みだと感じました。

東京交響楽団の無観客コンサート、ミューザ川崎シンフォニーホールのキャパシティは約2000です。
本来2000人にしか届けられない音楽が、世界中約20万人の聴衆に届いたのです。

人口減少社会の救世主

人口減少社会において、クラシックを愛好する方の人口を増やすためには、オンラインとオフラインを掛け合わせることが必要です。

ファンを増やすこと、そのためにもまず知ってもらうこと、これが肝要です。

どの業界も深くて狭い世界です。
自分たちが思っている以上に深くて狭くて、他の人は全く知らないなんてことの方が多い。

オンラインが元気玉を可能にする

ここで議題になるのは、どうやって収益化するか。

貨幣経済的な思考から、
信用経済、評価経済的な思考にマインドをシフトさせる
必要があります。

オンラインはバーチャルの世界ではない。
オフとオンはそれぞれ相乗効果的に高め合うもののはず。
オンラインの世界での信用、ファン、フォロワーは大切な資産です。

オンラインを活用すれば今まで以上にファンづくりができます。

世界中のファンが表現活動をする人たちを支えます。
オンライン上で投げ銭をしてくれたり、クラウドファンディングで寄付したり、あるいは多くのファンが見てくれることにより動画にスポンサーが付いたりもする。

コンテンツをシェアして、さらに多くの人に、明日のファンに届けてくれる役割も果たしてくれるでしょう。
エンタメの世界では今当たり前に起きていることです。

しかし昔はこんなことできなかった。
マスメディアや大手スポンサーに頼らなくても、
ドラゴンボールで悟空が元気玉を集めるように、地球上みんなで支えることができるのです。

話がだいぶ飛躍しましたね。失礼しましたf^_^;

WEB上で公開することは、様々なリスクもともなうことは事実です。
しかし、よく分からないからと言って、悪い面だけを見ていては勿体ない。
良い面も見て活用していくことで明るい未来が切り拓かれると思います。

最後に、、、
SNSに演奏を上げている皆さんは戦略的にやっているのではありません。
こんな状況でも自らが純粋に音楽を楽しみ、また多くの人に演奏を聴いてもらいたい、楽しんでもらいたい、とされている人ばかりです。
ファンというものは結果的につくものであって、打算的に、狙って作るものではないのかもしれません。

※著作物の扱いについては今回は触れませんでした。

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