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⑱予防線を張った結果

「澪さん、おはようございます」

『おはよう…』

会社ではDくんがいつも通り、淡々と働いていた。

こっちは顔を見ると恥ずかしさで目を逸らしたくなるっていうのに…

これだから未知数男は…


しかし私も拗らせているがいい大人。
昨夜の事を引きづりながらも、
私は冷静を装い業務についた。







夕方


「夜、飯行きませんか?」

DくんからLINEが入った。


良かった。
とりあえずワンナイトで
捨てられる心配はなさそうだ。

私はすぐに返信し、
定時で上がれるように仕事を片付けた。






「昨日の事、先輩に色々聞かれました」

食事をしながら、Dくんは焦った様子もなく
世間話程度に私に話してきた。

『え、なんて聞かれてなんて答えたの?』

「お前らそういう関係だったのかよ?って聞かれたので、そうですって答えましたよ」

『それで先輩は?』

「別に?そうなんだー位ですかね?
下手に弁解とかしないではっきり言ったほうが良いんですよこういうのは」

『へー…』



落ち着いているというか、手慣れてるというか。



【そうですってどういう意味よ…】


それを聞きたかったが、怖くて聞けなかった。

ただSEXがしたかっただけなのか、
好意があったからSEXしたのか。

聞いたことでDくんが鬱陶しくなって
この関係が壊れてしまうのが怖かった。






その夜、私は再びDくんの家に泊まった。



そして事前に私はとても
弱気でずるい問いをした。






『私、付き合ってる人以外とはSEXしないんだよね』




今にもやりたそうな男を前に、
付き合ってと言わせる作戦。

予防線をガチガチにはり、
男の逆らえない本能で窮地に追い込む。

傷つきたくない、駄目女のやることだ。

さて、未知数男はなんて答えるだろうか。







「俺はもう付き合ってると思ってましたけど」

何とも意外な答えが返ってきた。


『なんで!?何も言われてないよ!?』

驚いている私をベッドに押し倒して

「俺だって、付き合ってない女の人とこういうことしません…よ」

そう言いながら、Dくんは私の中に入ってきた。



やりたい為だけの、その場しのぎに言葉か否か


ちゃんと確認するまで、
拒否しなければいけないのに


Dくんの顔と、身体と、が好きすぎて

拒否なんてできなかった。




そしてその夜もDくんの寝間着を借り
Dくんのベッドで寝た。



そして次の日。



土曜日なので、私は休みだ。

Dくんは取引先との打ち合わせがあるため休日出勤との事だった。


一緒に家を出る為に準備しようと居たら

「澪さん休みなんだからゆっくりしていたらいいじゃないですか」

と言われた。


しかし、一緒に出ないと鍵もかけられないし
着替えもないので家に帰りたいというと


Dくん棚の引き出しを開け、何かを持って戻ってきた。




「これ、この家の合鍵です。これで自由に出入りできるでしょう?」



そう言って私に鍵を渡してくれた。



「それと、着替えとか少しここにおいて置いたらいちいち家に帰らなくていいんじゃないですか?任せますけど」

「じゃあ、俺行ってきますので」





そう言ってDくんは出ていった。





合鍵、部屋に私物、そして昨夜の言葉




あれは、SEXがしたい為だけに
ついた嘘ではなかったようだ。



私は、Dくんの彼女。



溢れる嬉しさに浸りながら
私は1人、Dくんの部屋で幸せな土曜の朝を
今だけの幸せを、満喫した。



つづく

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