わがままボディ
つい先週くらいまで、とてつもない便秘でした。
週に一度だけ、休日に薬を使ってなんとか排出してるという惨状でした。
ですが今は、一転して毎朝決まった時間にお腹が痛くなるという状態です。こうなるまでに特にこれといった生活の変化は無かった筈なのですが。なんなんでしょう、この気まぐれな僕の腸は。
思えばこの腸のせいで、僕の人生にはあまり良い思い出はありません。
そんなわけで、今日はちょっぴり汚いお話をしてしまいますが、どうかご容赦を。
小学生くらいの頃までは特に意識をしたことはなかったのですが、中学に上がった頃くらいからでしょうか。自分のお腹が弱めだと感じ始めたのは。
それまでは学校にいる間に大きい方の便意を催すことなんて滅多になかったのですが、だんだんと授業中とか部活中とかに便意を感じる頻度が増えていった気がするのです。
今はどうか知りませんが、この時の平成の時代においては、小学校や中学校では「学校でウ○コをする」という行為はタブーであり、そのタブーを犯す事はもはや学校生活において死を意味するも同然でした。
なので休み時間にトイレで個室に入ろうもんなら、その日からあだ名は「ウ○コマン」となり、その噂はたちまち学年中に広がり、しばらく屈辱的なイジリを受けてしまうことになるのです。
そのように学校でウ○コをすることが市民権を得ていない中、お腹が弱くなってしまったことは、僕にとって当時は大変な死活問題でした。
なのでそんな時は、こっそりと校舎の隅にある人気のないトイレに駆け込んで、なんとか事なきを得たりしておりました。
しかし、とある日は違いました。
最悪なことに、その日は授業の始まった瞬間に便意がやってきたのです。しかも、これはちょっとタチの悪いタイプで、お腹が痛くなるくせに、すぐには出ない系のやつです。このタイプは腹痛の苦しみは味わうけども、出したくても出てくれないために苦痛だけが長引くという、最低の部類の奴です。しかもガスは無限に湧いてくるので、救いようがありません。
このパターンは、仮に恥を忍んで「先生!トイレ!」と、トイレに駆け込んだところで、結局出てくれなくて、ふんばり損となることが多いのです。そして教室に戻ったタイミングで出したくなるという、悪意の塊のような便意なのです。
なので、結局出したくなるまで我慢し続けるしかないのですが、さっきも言ったように、なんせガスだけは無限に湧いてきます。そのため、腹痛と同時に放屁も我慢しなくてはならないという、地獄の責め苦ともいえる拷問タイムとなるわけです。
僕はその日まさに、その拷問とも言うべき便意に襲われてしまったわけです。もうお腹は痛いし、屁は放出したいしで。
しかし先生の声しか聞こえていないような授業中に屁をぶっ放そうもんなら、それはまた学生生活において死を意味します。一か八かですかしっ屁をしたとしても、万が一、ニオイでバレたらそれもまた死。逃げ道はありません。
僕は己の名誉を守るために苦痛との闘いに全集中しました。腹痛はともかく、まずは屁を引っ込めることが先決です。しかし予想もしない方向から、その努力を無にするべく影の刺客がやってきたのです。
鼻がムズムズしはじめたんです。
そうです。
クシャミの野郎が来やがったのです。
うそだろ!?このタイミングでか!?
腹痛と放屁に耐えている中、やってきた第三の刺客のクシャミ。腹の中のガスを全て放出させにかかってきます。
やばい、ここでクシャミなんてしたら・・・勢いで肛門からガスが噴射してしまう・・・!いかん、それだけは避けなくては。なんとしてもこらえろ・・・!
ダメでした。
「ぶえーーっっくしょい!!」 「ブリィッッ!!」
鮮やかにコンボが決まりました。
このあと教室中がどうなったかはご想像にお任せしますが、僕はこの時、
「ああ、僕って生きてることを神に祝福されていないんだなぁ・・・」
と本気で思いました。
もちろんその後しばらく屁こき虫としてイジられ続けました。
神は残酷です。
もう一つ、こんなこともありました。
中三の終わりごろ、卒業遠足なるものがありました。
クラス別にバスに乗り込んで、どこぞの遊園地に向かうというものでした。
少し話は逸れますが、先ほどの悲惨なエピソードだけでなく、どうやら僕は肝心な時に腹痛に襲われる癖がついてしまっていました。
部活の大会時や修学旅行のバスの時、中間や期末のテスト時・・・
しばらくトイレに駆け込めない状況になると決まってお腹が不機嫌になるのです。
この卒業遠足の日も例外ではありませんでした。
バスに乗り込むまでは、本当に何ともなかったのです。そんな予兆すらなかったのです。
しかし、バスに乗って着座した瞬間に、やっぱりヤツはやってきたのです・・・
猛烈な腹痛。しかも今回は、括約筋を緩めるとすぐに出ちゃう系。
たちまちアブラ汗にまみれる僕。そして隣の席に座った地味系男子の豊橋君が僕の異変にすぐ気づき、「大丈夫?先生に言った方がいいんじゃない?」と心配して言ってくれました。
しかし、そんなことをして、仮にバスをどこかのトイレに停めてもらったりでもしたら、またクラス中にウ○コ野郎の烙印を押されてしまいます。それだけは避けたい。もうあんな悪夢は嫌です。
「大丈夫・・・高速乗って、SAの休憩時間まで我慢するよ・・・」息も絶え絶えに僕は豊橋君にそう言いました。
ですが、通路を挟んで隣の席に座る、クラス一のおしゃべりガールである高野さんまでも僕の異変に気付きます。「ヒロオカ君どーしたの!?」
僕はもう何も考える元気がなかったので、ありのまま、「いや・・・お腹がいたくて・・・」と、小声で答えてしまいます。
その瞬間、高野さんはクソでかい声で、その場で「せんせー!!ヒロオカ君がお腹いたいってー!!」と叫びます。
おいいいいいいい!!!!!!!このおしゃべり小娘ぇぇぇ!!!
こうして僕の状況が、クラス全員+先生+運転手さん+バスガイドさんに一瞬にして知られてしまうことになります。おのれ高野さん・・・
その時はまだ高速に乗る前でしたので、それを聞いた運転手さんはバスをガソリンスタンドに寄せてくれました。そして僕は先生の付き添いのもと、トイレを借りに降りることとなりました。
その光景は他のクラスのバスからもバッチリ見られていたようで、自分のクラスだけでなく、学年中に「遠足のバスから降りてウ○コに行った男」として、僕の名が轟いてしまいました。
まあ、とはいえある意味高野さんに救われたところもあったのかもしれません。あのまま我慢してたらどうなってたことやら、です。
トイレからバスに戻ってくるなり、早速あちこちの席から「お帰り!ウ○コマーン!笑」というイジりが聞こえてきました。もはやどうでもいいです。もうなんとでも言ってくれ。
色んな意味で精も根も尽き果てて席に戻った僕に対し、豊橋君だけは「ヒロオカ君、大丈夫だった?よかったね」と、優しい表情で声をかけてくれました。豊橋君・・・君とならいい友達になれる気がする。
・・・まぁ中学卒業してから一度も会ってもいませんが。彼にはどこかで幸せになっていてほしいものです。
そんなわけで、僕の青春時代はこの腸のせいで台無しでした。多分、前世は相当な悪人だったんでしょう。
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