E137: 本名と酢の物
私が残念に思っていることの1つに、
「私の本名は、結局誰がつけたかわからない」
という問題がある。
これには事情がある。
私は出生時、早産、未熟児のうえ、呼吸が弱くなったり荒くなったりして、生まれたというのに、予断を許さない状況にあった。こういう不安定な状況を心配した周りの人たちが、
「名前に関しては、ちゃんと姓名判断ができる人に委ねてはどうか?」と言い出した。
母の叔母が、「近所に、名付け親名人がいる!」と言うので、大叔母、祖母が揃って、そこに頼み込んで、いくつか名前の候補を挙げてもらったらしい。
ところが(自分の息子の名前は自分でつけたい!)
と思っていた父は、周りからのこの声に、最後まで抵抗したらしい。
(父方の)祖母が、「名前をつけないでグズグズしている間に、赤ちゃんが死んじゃったらどうするの!」と渋る息子を説得したことで、最終的に父は承諾したのだという。
そこで考えてもらった名前候補の1つに
私の本名があったのだ。
その本名に一目惚れした母は、
「うわーいいね、この名前!これにする!」
と決めたのだという。
母が最終決定してくれたのはよくわかった。
ただ、ここで疑問が残る。
そこで先日、母に確認してみた。
「その、名付け親名人って誰なの?」
すると、
最終的に私が決めたんだから、それでいいじゃないの。
その人が誰だったか、全然覚えてないわ。
あの時の私は、あんたのことで精一杯だったから。
あんたに母乳を飲んでもらうことで必死だった。
だから正直言ってそれどころじゃなかった…。
とのこと。
まぁ確かに…。
残念ながら、
その名付け親名人に頼んでくれた、母の叔母も、母方の祖母も、今はもういない…。
今思えば、生前に確認しておけばよかったと思う。
それとは別に、実は私がもう一つ奇妙に思っていることがある。
母が名前を決定してくれた後、今度は、父方の祖母が「最終確認」ということで、あるお寺に、その本名を持って行き、字画やら、運勢やら、将来的なものを徹底的に調べてもらったらしい。
みんな、どんだけ慎重なのよ。苦笑
それだけ私の容体は、安定していなかったということなのだろう。
そのお寺では、こんなことを言われたらしい。
「このお名前(=本名)はすごくいいです。頭が良くて、元気に育つでしょう。あと…」
ん?あと?
酢の物を食べさせると良いでしょう!
……はい?
元気に育つはわかる…
でも、お寺のアドバイスとして「酢の物」って何?
その点だけはよくわからなかったが、
確かに私の健康状態は、本名をつけてから
劇的に回復したらしい…。
このアドバイスのせいで、
いや、このアドバイスのおかげで、
うちの食卓には、やたら「酢の物」が出てきた…。
恐るべし、謎の「酢の物アドバイス」
小さい頃は、正直迷惑だなと思ったが、
最近は、積極的に食べるようにしている。
(考え事をしていて)
スマホと家の鍵を、冷蔵庫に入れたりするような男なので、「頭が良くなる」という予言は、きっと当たってなかったと思うが、
「この赤ちゃんは長くないかもしれません」
と産院で言われたにもかかわらず、私はおじさんになった今も、おかげさまで、こうして元気に生きている。本当にありがたい話だ。
SNS上で本名は明かさないと決めているので、ここまで書いておきながら、肝心の名前は出さないのだけれど、私はこの名前でなかったら、今ごろ生きていなかったかもしれない。
今回、改めて確認してよくわかったのは、
父方、母方、ずいぶんいろんな親族が、私の名前のために、駆けずり回ってくれたおかげなのだ、ということ。
本日の夕食にも、酢の物が出てきた。
とりあえずこれからも、健康に過ごそうと思う。
本名と酢の物に感謝。
結局わからなかったけど、その名付け親にも感謝。
頼んでくれた祖母と大叔母に感謝
その名前を選んでくれた母に感謝。
父を説得して、お寺にまで行ってくれた祖母に感謝。
結局納得してくれた父に感謝。
ここまで読んでくださった皆さんに感謝。
【66日ライラン 52日目】
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