締めるという感覚
きもの以前は「巻いて」いた
きものを着るようになるまで知らなかったことの一つが、「締める」という感覚だと思う。
きものと似たような巻きつける衣服に「巻きスカート」があるが、私は長方形の布を巻きつけるだけのスカートをきものを着る前から手作りしていた。
初めて作ったものは、布の両端にヒモを縫い付けたもの。
それから、布の上を三つ折りにしてヒモを通したものも作った。
ヒモをつけずに布を巻くだけでスカートになる民族衣装は世界中にあるそうだが、そういうのを真似てヒモなしの一枚布も作った。
着るときは、腰にくるりと巻き付けて、ヒモを結んだり、ウエストの布を折り返したりする。
そこに締めるという感覚はなかったと思う。
巻きつける位置もウエストで、腰骨ではなかった。
私の巻きスカートは、スカートだから、着方も感覚も完全に洋服だったのだろう。
ウエストの位置で、ほどけないようにピッチリ巻いて、ヒモもぎゅっと結んでいたし、外出のときは心配なのでトイレなどで巻き直したりもしていた。
腰紐で知った「締める」
きもの練習を始めてからも、最初のうちは腰紐を高めに結んでいた。
今振り返ると「締める」という感じではなかったから、「結んでいた」と書いておく。
本やネットの情報を見ながら練習していたが、腰紐の位置はココ! と明確に示しているものは最初のうちは見つけられなかった。
また、ネットなどで見かける写真なども、けっこう高めの位置で結んでいるものが多い。
洋服に慣れきっていることもあり、練習開始当初は、たぶんウエスト辺りで結んでいたと思う。
練習とはいえキレイに着たいとか、崩れないようにという考えもあって、きつめにギュッと結んでいた。
ついでに胸紐もきつく結んでいたので、最初のうちは背中が痛くなったり、お腹が苦しくなったりしていた。
そのうちにどこかで腰骨の位置で締めるのだ、ということを知り、やってみたら楽だった。
骨があるからギュッと締めても苦しくないし、多少ゆるんで上がってしまうことはあっても、そうそう崩れないことも分かった。
おはしょりを作るのが少しやりにくく感じることもあったが、どのみちキレイに着ても家族に「きもの外出禁止」と言われているのだ。
多少ダボッとしたおはしょりでも、自宅で快適に過ごすのに何も支障はなかった。
さらに参考になったのが、「キモノを着こなすコツ」という本だった。腰紐の位置について、詳しく解説されている。
この本でも腰骨のところが腰紐の位置とされていて、そこで締めると気持ちいいとのこと。
また、動きの中心が腰椎であることまで明記されていて、腰骨で締めることが人体の動きにも適っていることがわかる。
胸紐は「掛ける」で帯は「巻く」のか
同じ本の中で、腰紐と違い、胸紐は「掛ける」と表記されている。
「締める」ではない。
真似して「掛ける」やり方をしてみると、確かに苦しくなかった。
おはしょりも少しはキレイになっている気がする。
なるほど、これが「掛ける」という感覚か。
これならお腹や胸も苦しくないし、背中が痛くなることもない。
さすが、コツをまとめた本である。
帯は、「巻く」と「締める」の両方の記載があるが、どうやら体に「巻いて」、緩みが出ないように引き「締める」といったニュアンスで書かれているようだ。
どちらかといえば、帯は「巻く」ととらえて良さそうだ。
帯についてはあんまり読み込んでいないので、まだまだ勉強が必要かもしれない。
最近は角帯に夢中なので、帯の勉強はもう少し先の話になると思うが。
腰骨に「締める」もの
同じ帯でも、男性の場合は腰骨に締める。
私は最近角帯を買ったが、簡単きもののときには腰骨に締めることがあり、これが気持ちいい。
手ぬぐいで同じくらいの幅の帯を作って、洋服の下に締めることもあるが、これもまた、腰紐や角帯ににた感覚でカラダに安定感が出る。
この手作り帯は、きものを着始める前に作ったもので、長さが腰紐くらいしかないが、洋服のときに締める時には長すぎないほうがかえっていい。
そして最初の話に戻っていくのだが、腰紐の締め方を練習したあとで巻きスカートを着たときに、「以前は締めてなかったのだな」と実感できた。
締めていないと分かると締めてみたくなり、私の巻きスカートは全部、長方形の一枚布になった。
きもののように裾を合わせて、腰紐で締めて着るのだ。
余った布は折り返し、上にシャツなどを着て隠す。
きもの同様に、キュッと締まると気持ちがよく、多少緩んでもほどけることはない。
トイレでいちいち締め直す必要もなくなった。
緩んだだけの状態と、直す必要があるほど崩れている状態は違うみたいだ。
買い物くらいのお出かけでは、崩れることはまずない。
1年間きものを練習したことで、締めて着る感覚が身についてきたのかもしれない。
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