仮面ラヰダーYEBISU第三回

二十年前の夢を加筆修正。

・第一場 フレンドリーモータースにて博士と五郎

ナレーション「月日は流れ栄光の少年ライダーも着実に齢を重ねていった。そんな彼らを新たに吸収すべく組織されたのが『青年ライダー隊』である」

「順調だった少年ライダー隊じゃがの、平均年齢の上昇はやはり避けられん」
「いくら『心の自転車は補助輪付き』ってもいつまでもチビッコ気取りは通らないっすよ」
「新規会員も見込めないのでここは一つ改称するかの」
「手を打つところが違う気もしますが、まあ名前は変えたほうがいいっすね」
「順当に『青年ライダー隊』でどうじゃ」
「うーん、バイクで代々木に突っ込んでいく昔の右翼って感じすかね」
「では『ライダー隊中等部』、どうじゃ?」
「学費が高そうっすね。貧乏人は居心地悪いそうだし、高校生になったら文字通り卒業しなきゃいけなそう」
「では『ライダー隊青年部』じゃの。もう時間がないし、これで決まりじゃ」
「世代によってはオルグとか内ゲバとか頭をよぎるし、就職した人と進学したひとの温度差が心配っすね」
「若いくせにへんに事情通じゃの」
「卒論がそこらへんだったんで---って、明治通りでテラショッカーがタピオカの空容器をポイ捨てしてるので『とうっ!』」
「ちょっと待って代官山くん、きみ大学行ってたの? まじで!?」

・第二場 少年ライダー隊本部
  隊員たちが集まって本部よりの文書を開封している。

 「本日より隊の呼称を『ライダー隊青年部』と変更する、だって」
 「げろげろ」
 「まじかよ」
 「『ラ青』とかよばれんだぜ」
 「今だって『マル小』つってバカにされてんのに」
 「絶対に上に全共闘の生き残りがまざってるよな」
 「だいだい今時ライダーってのがださい」
 「バイクなんか乗んねえって」
 「やっぱクルマでしょ」
 「仮面ドライバー!」
 「メットかぶって運転するわけ?」
 「知り合いに見られたら俺死ぬわ」
 「ボーダーとかクラバーとか」
 「マヨラーもいいね」
 「メットかぶって料理かよ」
 「部屋の中だったら我慢できるでしょ」
 「外に出れないんじゃ何すんのよ」
 「だっていい年してチャリだぜ? つかれるよって」
 「でもさー、うちの学校3ナイ運動なんだよ」
 「げー、今時まだ残ってるんの」
 「なんか、3ナイ運動発祥の地とかいって、教師とPTAとOBがスクラム組んで一体となって地域ぐるみで頑張っちゃってるわけよ」
 「基本的人権の侵害」
 「バイク見るのもダメっていってんのに『ライダー』はまずいわな」
 「だしょ? 言えないんだよ」
 「って、おまえまさか秘密にしてんの?」
 「いやその」
 「どうりでこそこそしてると思ったよ」
 「いや実は俺も」
 「えーっと、俺もまあそんな感じかな」
 「まじかよ」
 「おれは兄貴と祖父さんには話してあるぞ」
 「胸はってんじゃねーよ」
 「おれもお袋に泣かれてよ。せめて近所にはわからないようにしてくれって。あたしのことはいい。兄弟のことを考えとくれって」
 「情けねえな」
 「んじゃテメーはどうなんだよ」
 「チャリのパンクもなおせねえくせにすごんでんじゃねーよ」
 「やんのかコラ。姉貴の縁談ぶっこわすぞ」
 「兄貴の就職話壊されてーのかよ」
 「おめえみたいな根性無しはライダーマン隊にでも入ればぁ?」
 「4人目のライダーをバカにすんのか!」
 「大体昔からお前は顔がイカデビルにちょい似だと思ってたんだよ!」
 「名優天本英世をバカにするかあ!」
 「だまれこのガマボイラー!」
 「どうせメットかぶるんだから顔のことは言うなー!」
 「ライダー青年隊キック!」
 「ライダー少年隊パンチ! ああっ、技が軽い!」
 「無免許ライダーブレイク!」
 この日をきっかけにライダー隊は、果てしない分派抗争の泥沼に沈んでいった。


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