巨大な牌

 朝の朝礼で、社長はじめ経営陣が勢揃い。社員の前に整列。わざとらしい作業着姿。
「みなさんには個別に会社と外注契約をむすんでいただきます」と社長。
 横では普段はへらへらぐにゃぐにゃしている老齢の会長までが「気をつけ」と言われた中学生みたいに真っすぐ立っている。
 私を含め社員たちはみな気合が入らない。ふてくされたように視線を外し斜めに立っている。そうはいっても社長は個人的にも友人であるので、
「適正価格だったら請けますよ」と冗談めかして場を和らげる作戦に出たのだが、瞬時に素の顔に戻った社長は、
「あんまりいじめるなよ」と低い声でつぶやいた。
 朝礼後の事務所。机は全自動麻雀卓なのだが、その上に、通常の牌よりひとまわり大きい雀牌を社長がぶちまけた。
「こいつをよく見ておいてくれ。時期主力商品と考えている」
 朝礼のときの切羽詰まった感じはもうどこにもない、いつもの粗雑で陽気な彼に戻っていた。
 一回り大きい。つまむというより握るという感じ。盲牌した感触もおかしい。みれば八筒のデザインが変。不均等で上下がある。見ろよと対面が示してきた八索も同様。白牌はさすがに彫り込みのないつるりとしたものだったが、クリア層の下に動物のイラストが書いてある。これじゃ白じゃない。
 当然のごとく全自動卓には入らないので手積みすることになった。かき混ぜるとジャラジャラというおなじみの音ではない鈍く重い音がする。
 これははたして積めるのかしらと思ってる時に目が覚めた。


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