印象派の光 展にまつわる記、憶

6/27 記録です。一緒に行ってくれたのは、一緒に美術館に行きたいねとよく話していた印象派が好きな友人。やっと叶ったね〜

記 (好きな絵のこと、手元のメモのままに。)

《海、水先案内人》
ウジェーヌ・ブーダン(60歳)


愛している、「空の王者」。
もうすぐ天気が変わる、その暗示、ブーダンの絵は動く。

《サン=タドレスの断屋》
クロード・モネ(27歳)


ブーダンの空は一瞬で動く、変わる空
時間を止める絵というより、時間の流れを示す絵。
それを師と仰ぐモネの絵も同じ、風が吹く、草が揺れる、雲が動く、向こうが晴れる、人がその景色を見て立ち止まる、きっとそろそろ動き出す、またはまだじっとそこに立ち尽くす。


《エトルタの波の印象》
クロード・モネ

「印象派」という揶揄をまさに表す一枚。けれどその波の動きや、雲の奥の空の感じ、淡い明るさが美しくありながら丁寧な描写だなぁと私は思う。



《ラ・ド・サン、フィニステール県》
アンリ・モレ(55歳)

岩肌のこわさ
波があまりにも綺麗
波の形が筆致に現れること、筆致の凹凸は波のためにあると言っても過言ではないと思う。
が、岩肌も同様、なぜならこの岩肌は波によって削られて作られたものだから。


《グルノーブルから望むモンブラン》
ギュスターヴ・ロワゾー(42歳)


雪の中の暖色
山肌の紫の上の茶と緑、冬の木々だ
空の澄んだエメラルドグリーンのような青の空気感に冬の鼻にくるツンした痛覚を思い出す、そしてそのぽわっとした雲

ずっと観ていたかった、最近山がすきだ


《オレンジを積んだ船、マルセイユ》
ポール・シニャック(60歳)

シニャックの点描は煉瓦造りの街並みだからこそのものだと勝手に思っている。実際そうなのだろうか。
しかし水面と煉瓦造りの建物だけでなく、船の帆や空や雲にまでその点描が映っているから、その明るい色彩と併せておもちゃみたいな印象を受けるのだろう。


《遊ぶ母と子》
アンリ=エドモン・クロッス(41歳)

輪郭の整えられた絵の上からわざと点描が打たれることで、既に薄れつつある(非デジタル時代のものの記憶が、デジタル的に薄れていく感じがする、)遠いあたたかい記憶のなかのような感覚の中にいる。本当にすごい技法だなぁと思う。


《ニンフの居る風景》
イッポリート・プティジャン(47歳)

この脇の陰影の色感の素晴らしさ、草花の様子も
筆致から風を感じる、肌を撫でる風の方向。
原の草の動きと、肌の塗りの向きが一致しているため。


《ラバスティド=デュ゠ヴェールの教会》
アンリ・マルタン

影の色を先に描いてからあかりの暖色を乗せているのか、だから暖色で描かれた影も、きちんと影としての存在感を出しているような気がする。


やはり印象派展の文末にはいつもフォービズムがいるね。筆致の大胆さ、どれだけもとのモチーフの印象を残したまま簡略化できるかという研究、引き算的手法であることの凄さ。

《水浴の女たち》
ルイ・ヴァルタ(41歳)

この木々の奥の空、葉の部分斜めの筆致、

ごめんうまく言葉にできないや


✴︎


憶 (瞬間性、忘却は呪い、呼吸は乱れて)


「美術館は心の病院」と聞いたことがある。確かに、目の前の絵とのみ向き合って自分を忘れ、呼吸を整える場所である。が、それと同時にどうやらわたしは呼吸を乱してしまうことも多々ある。
わたしに該当するアルファベット3文字や4文字の性格を表すもののサイトはいつも、「外出時や情報量の多さに精神的、感覚的な疲労感を感じやすいこと」を教えてくれるが、美術館を出たときやその後の、胸の辺りに残る感覚はそれと違う気がしている。

アーティゾン美術館 アブストラクト展 解説文

別の美術展であるが最近理解を促してくれたのはこの解説文だった。
わたしが印象派に吸い込まれ吸い取られるような感覚を覚えるのはその「瞬間」だからだ。モネが描くその「瞬間」をひとつも取り零したくないと強く思うからだ。多分。

わたし以前もどこかに書いたよね、
感情はその瞬間の一過性で、ずっと憶えているなんてできないから、それは言葉以上に儚くて尊いものだから
いつだったかそんな感覚に快を覚えた快にまだ囚われている、忘却は呪いだと思っている。

わからないけど、きっとモネも、ブーダンも、見たままのそれを残せないことに対してそう思っているといいな と思う。わたしはあなたのその絵を観て、そう思っているよ。


だからやっぱり美術館には人と来るべきで、美術館を出た後は甘いものを摂るべきよ と思う。
それで深い茶色のテーブルで向かい合って甘いケーキを食べて「わたしもその絵観て同じこと思ったよ!」とか言い合いたいね。

いつも一緒に行ってくれるひと、ありがとう、また行こう、次はどこ行こう?

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