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怒っていた母の背中。

小学5年生だった私は、早歩きで歩く母の後ろを必死でついて歩いていた。
その日、母はとても怒っていた。
理由は、個人面談で担任の井上先生に言われた一言だった。

「ともこちゃんは、一人っ子のせいか、少しマイペースなところがありますね」

母は私が「一人っ子だから」と言われるのをひどく嫌がっていた。それで怒っていた。

面談終わり、学校からの帰り道。早歩きのまま母が言った。

「お母さんは、あの言葉だけは言われたくなかったのに!あれだけは言われないように、頑張ってあんたを育ててきたのに!」

振り向きもせずそう言った母の背中に「ごめんなさい」と言い、一生懸命ついて歩く。すごく悲しかったし申し訳なかったしつらかった。

今思えば、一人っ子なのは私のせいじゃないし、実際に一人っ子なのは仕方のない事実だし、そこを責められても。理不尽極まりない話である。

でもずっと、あの日のことが胸の隅に残っている。あの日、前を歩いた母の背中がずっと残っている。

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