関根さん

関根さんは眼鏡だった。高校2年生の時に同じクラスになった。
関根さんは、サラサラのストレートヘアで長い髪を1つに束ねて、ゆっくりと弱弱しく歩く。
関根さんは、私の友達の友達で私が積極的に話かけることで次第に打ち解けてくれるようになった。

関根さんはよくクラスのキラキラした女の子とか、男の子をバカにするようなことを言った。それは、私たち「端っこの女子」の中では日常的な話題なのだけれど、なぜか関根さんはキラキラした男子に話しかけられることが多かった。

多分、関根さんがキラキラの女子とも、端っこの女子とも違った人だったからだと思う。
関根さんはあんまり私たちと遊んでくれない。高校生の女の子は金魚のフンよりも固いグループ性を持っていて、誰かが「あそぼ―」と言いだしたら特別な理由ない限り遊ぶことになるのは暗黙の了解的なことがあった。けれど、関根さんは我々のことを特別好きでも嫌いでもないうちはあまり遊んでくれない。「その日は無理」「用事あるから」「お金ないから」「しんどいから」。女の子の中には誘っても来ない関根さんについてたまに難色を示す人もいたけれど、結局関根さんが話に入ると彼女はいつも話題の中心にいた。

私は、関根さんのことが好きだったのだと思う。

関根さんは、痩せていて弱弱しく、運動もあまり得意ではなかった。私は、彼女のワイシャツに透ける細い腕をとても綺麗だと思ったことを覚えている。友達にふざけて眼鏡を取られた時の顔や、ゆっくりと手に口をもってブラックジョークを言う姿。朝いちばん誰もいない教室で二人きりで過ごす十数分。彼女と話すたびに胸が小さく踊る。彼女の小さく弱弱しいしぐさに目が離せなかった。

あれから何年もたってるけど、卒業以来関根さんとは会っていない。
私は関根さんのことが好きだったけれど、関根さんと私はあんまり相性が良くないことは何となく気づいていたから。あんまり趣味も合わない私と、関根さんが関わって楽しいと思わせることできないと思った。
今更会ってもどうしようもないけれど、たまにあの壊れそうな肩に手を伸ばしたかったなと思う時がある。

特定の女の子を好きになったのはそれがはじめてだった。というか、後になって認める形になったのだけれど。目の前にいるけど到底届かない感覚。今でも不思議と輝いている。

普通の友達のフリしてごめんね。


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